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2012.6.17
Ayacy's HP


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神緒のべるず 第2話 ガム工場見学ツアー -3-



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私たちは小さな会議室に通された。
円形のテーブル、観葉植物のような小さい木、ホワイトボード、プロジェクターなどが整然と置かれている。

「こちらですわ」

西園寺さんの声で振り向くと、その手にはカッターナイフが握られている。

「ひっ…!」

里桜が私の後ろに隠れる。
まさか襲い掛かってくるのか!?

「カチ、カチ、カチ…」
西園寺さんはカッターナイフの刃を出すと、それを観葉植物と思われる小さい木に当てる。
すると、少し粘り気のある液体が、小さい木から伸びてきていた。
樹液だろうか。

「当社で生産しているガムの原料は、このような専用の木の樹液から作られております。
 ここにあるのは会議室を飾るための小さい木であるため、樹液は少量しか取れませんが、材料を生産している拠点では、大量の樹液を生産しておりますわ」

ふぅ〜。樹液を採るためのカッターナイフだったのか…。
一気に肩の力が抜けた。
どうやら危機的状況だったと思っていたのは、ただの思い過ごしだったようだ。

「な、なるほど…。よくわかりました」

それを聞くと、西園寺さんは満足げな表情を浮かべる。どうやら「聞いてほしかったこと」のようだ。
あんな怪しげな演出まで準備しているんだから。

「ところで、せっかくここまで来られましたので、新作のガムの試食をされていきませんか?
 新しい味わい方をできる、これまでになかったコンセプトの商品でございまして、ぜひ里桜さんにご試食いただきたいのです」
「はい、良いですよ〜」
「それでは、こちらの席でしばらくお待ちください」

私たち2人は会議室の椅子に座る。
西園寺さんは、新作のガムを取りに行った。

「姉さん、怪しいところ、全然ないね」
「そうみたいね。クライアントが無用の心配をしているだけってことなら良いんだけど…」
「たぶんきっと、そうだよ。この世の中にそんな悪い人がいるわけないし」

部屋を見回す。
白い壁の会議室で窓はない。
悪の組織みたいに怪しげなタペストリーとか巨大なエンブレムとかが飾ってあるわけでもないし、普通の会議室のようである。ただ、見学スペースなわけだから、一見普通の会議室を装っているだけってことかもしれないが。

5分ほど待つと、西園寺さんが会議室に戻ってきた。
ガラガラと台車を押してきた。
その上に、大量のガムとビーカーに入った液体、皿に乗った粉が置かれている。

西園寺さんの解説が始まる。

「こちらが新作のガムでして、まずガムを液体につけて、さらに粉につけてから口に入れます。
 ちょうど、天ぷらを揚げるときのような感じで。
 こうすることで、お客様自身が味の調整をすることができる商品ですのよ」

里桜が興味津々だ。

「いただきま〜す!」

もぐもぐ…

「すごい…。溶けていく感じ! こんな味も出せるんだ!」
「ありがとうございます。液体と粉の量を調節して、いろんな食べ方を試してみてください」

といった感じで、30分ほどガムの食べ比べが続いた。

時計を見ると、そろそろ日も傾きかけてきた時間だ。そろそろこの見学ツアーも終了の時間だろう。
結局、何もなくて終わっちゃったな。

ガムの食べ比べも終わり、西園寺さんが「それでは最後に…」と、私たちに向き直る。

「これからお見せするものが、本日のツアーの締めくくりとなります。どうぞ、こちらへ」

私たちは西園寺さんの後に付いて、会議室を出た。



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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。


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