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2012.6.17
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神緒のべるず 第5話 航時見聞録 -2-



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5分くらい待っていると、奥の部屋から人が歩いてくる音が聞こえてくる。
誰かが来るようだ。

ひょっこり顔を出したのは小さな女の子だった。

「え?」

想像していたものとは違う、あまりの背の低さに、睦はビックリしているようだ。しかし、なんというか、オーラがあるというか。しかも、時代劇のお姫様みたいな格好をしている。

「だ、誰?」

睦が尋ねた。それを聞いた謎の女の子はフッと笑うと、

「わらわが何者か、わからないのも無理はないじゃろう。しかし、おぬしらが会いに来た者は、わらわということで間違いない」

と、年相応でない尊大な言葉遣いで回答した。私は、改めて聞いてみる。

「あなたは、誰ですか?」
「わらわか? わらわは、『おるる』じゃ。おぬしらが持ってきた『魔道科学の結晶 其の参拾七番』を作ったのは、わらわじゃ。おぬしらは、わらわにそれの修繕をさせようとして、ここに来たのであろう?」

「まぁ、たしかに」

なるほど。この女の子が、この武具の製造者であり、修理をしてくれるということのようだ。しかし、状況を飲み込みきれない。すると、おるると名乗る女の子は、私の方を向きながら聞いてきた。

「ところでおぬし」
「私?」
「そうじゃ。見たところ、奇妙な格好をしておるの。いったい『いつ』から来たのじゃ?」
「「いつ?」」

『いつ』、の意味がわからない。
まぁ確かに、私が今、着ているのはメイド服なので、奇妙な格好といえば、その通りなんだけど…。

私と睦が、理解不能な表情をしていると、おるるが説明をしてくれる。

「例えばじゃ、わらわがこの格好のまま、聖徳太子らがおった頃に行ったとすれば、変わった格好の奴が来たと言われるであろう? それが、おぬしらの今の有り様じゃ」

なんとなくわかった気がする。
つまり、タイムスリップしてしまったということだろうか。
つい先日、パソコンの中の世界に入り込んでウイルス退治を手伝わされた経験があったため、もう何が起きても信じられる気がしている。

「ん〜。なんて言ったらいいか。この時代がどの時代なのかがわからないと、なんとも言えないわね」

そういうと、おるるは「たしかに」と頷く。

「そうか…。そうじゃの。今は、徳川の将軍が治める世じゃ。今は10代目の将軍の家治公の御世じゃ」

睦がムゥ〜とうなりだす。

「私、歴史って苦手だったのよ。10代将軍って、西暦で言うと何年くらいの人よ?」
「私だってそんな細かいことはわからないわよ。でも、江戸幕府って成立年が『いちろうさん』だから1603年に作られて、たぶん1800年代中ごろに終わったんでしょ? ならば、200年前〜400年前くらいってことじゃないかしら?」
「そう…、だったかしら。そう…かもね。そうね!そうね!明日香が言うんなら間違いないわね!」
睦はアテにならなそうだ。

とりあえず、おるるに説明をしてみる。
「えっとね。私たちはたぶん、200年後〜400年後くらいから来たんだわ。私たちの住む次代にはもう、幕府ってものはなくなっているの。
 ごめんなさいね、詳しいことはわからないの」

「うむ。そうか。まぁ仕方がない。
 詳しいことは、それの中にある年数計測装置を見てみればわかるはずじゃ」

おるるが睦に手を差し出す。

「あぁ、これね」と、睦が手に持っていた武具を、おるるに渡す。

「修理には、何刻かかかるじゃろう。
 そうじゃ。おぬしら、町に出て、江戸時代の町を見物でもしてみたらどうかの?
 せっかくの機会じゃ」

それを聞いた睦は、

「そうね。そうさせてもらいましょうか?」

と言い、私の方を見る。

「えぇ、そうさせてもらうわ」

私たちは修理が終わるまでの間、江戸時代見物をさせてもらうことになった。



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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。


関連サイト: 巫女ブラスター2 巫女ブラスター

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