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2012.6.17
Ayacy's HP


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神緒のべるず 第6話 ベストをつくせ -3-



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その後、私たちはとりあえず、何事もなかったように振る舞うことにした。
当初の予定通り、リアン主導でカレーのための買い物に行くことにする。
スーパーマーケットの場所と行き方は教えたので、リアンが歩き、私と里桜が少し後ろからついて行く。

途中、地図を確認するために何度か立ち止まったが、問題なくスーパーマーケットにたどり着くことができた。
が、なぜか入り口のところでモジモジしている。

30秒くらいモジモジしていたので、声をかけてみることにする。

「どうしたの? 中に入らないの?」
「えっと…本当にここでいいのかなぁと思いまして……」
「ここでいいのよ。さ、中に入りなさい」

私が背を押し、リアンを中に入れてやる。
スーパーマーケットの中でのリアンの反応は、これまたおかしかった。

ニンジン、じゃがいも、タマネギ、カレー粉など、必要な品のある場所までは来るのだが、なぜかそこでモジモジしてしまう。そのたびに私が話しかけ、ようやく買い物かごに入れる。そんなことを繰り返していた。

レジの列に並ぶときも、どこの列に並ぶのか延々と迷い続けて、しかたなく私が一番空いている列に連れて行って並ばせる始末。なるほど。リアンのご主人様が私たちに何を期待しているのか、わかったような気がする。

買い物を終えた私たちは、無言のまま帰路につく。リアンは買い物袋を持ったまま終始うつむきっぱなしで、里桜は、とりあえず笑顔は浮かべているものの、何を話したらよいのかわからないで歩いている。

事務所に帰ってきた後、早速、カレー作りに取りかかることになった。
私はちょっと思うところがあったので、後の面倒を里桜にお願いする。

「里桜、これから私はちょっとやることがあるからいなくなるんだけど、カレーの作り方、教えられるわよね。
 火を使うし、付きっきりで見ていてもらってもいいかしら?」
「うん、いいけど…、あの子大丈夫かな」
「大丈夫でしょう。作り方は問題ないと思うわ。だから、見ていて、たまに手伝ってあげる程度でいいと思う」

里桜は心配そうな表情をしながら、リアンと一緒にカレー作りを始めた。
私はしばらくの間、別室に籠もって作業に取りかかることにした。



夜。
カレーの良いにおいが漂ってきている。
どうやらカレー作りはうまくいったようだ。

里桜に聞いてみた話では、カレーの作り方そのものはリアンが知っていたのだが、火をつけるとか、火を消すとか、水を流すとか、そういった物事の始まりすべてでリアンがモジモジしてしまったため、そのたびに後ろから声をかけるような状況だったという。
思った通りだ。

ちょうど光大朗さんも帰ってきたところで、夕食にする。
味は問題ない。問題なのは、何かしようとするたびに。モジモジしてしまうことだった。

夕食後、私はリアンを別室に呼び、あることを試してみることにした。

「リアン。メイドはそれなりに知識も豊富じゃないといけないと思うの。
 それで、ちょっとこのテスト問題を解いてもらってよいかしら」
「は、はい…」

差し出したのは、私が即席で作った、メイド検定試験100問。すべて「A」から「D」の4択式にしてある。

「制限時間は30分。80点で合格。間違っても怒らないから、制限時間ギリギリまでがんばってね」

私は部屋を出る。
さて、どうなるだろう。



30分が経過し、私が部屋に戻る。

「はいっ、時間よ。ごくろうさま」
「はぁ〜〜。む、難しかったです…」
「そう…どれどれ…」

私は答案用紙を受け取る。そりゃ難しいだろう。難しく作ったんだから。
回答欄は…ところどころ空欄になっており、自信のあるところだけ埋まっているように見受けられる。

「リアン、実はね。これは正しい答えを書いてもらうために作ったものじゃないの」
「へ?」

リアンが驚く。
私は、空欄になっているところを指さしながら言う。

「試験で高い点数を取るためにはね。こういう空欄のところも、とりあえず埋めた方が良いのよ。
 今回は4択の試験だから、「A」から「D」のどれか1つを書けば、4分の1の確率で当たるでしょう。
 間違った回答を書いても減点されるわけじゃないんだから、書かないよりは書いた方がマシなのよ」

リアンは下を向いて、モジモジし始める。

「今日一日、一緒に過ごさせてもらってね。あなたは知識も作業も、実際にやってみれば完璧にこなせるんだけど、それを行動に起こすことができない。他人に言われないと、行動が始められないの」

リアンはこちらを見て黙っている。

「いい? 今日一日、見ている限りでは、あなたが何かを考えて止まってしまっていたときに取ろうとしていた行動は、たぶん正しい。あとは、あなたがそれを実行に移すだけで良かった。この試験の空欄部分も、きっと、そう」

リアンは答案用紙に目をおろして、静かに、

「はい…」

とだけ答える。

「リアン。ベストを尽くしなさい。自信を持ってすばやく行動に移しなさい」
「はい。明日から、気をつけます…」

私は、ふぅ、と息をはくと、

「さぁ、今日はここまでよ。一日おつかれさま。
 明日もがんばろうね」

と言った。今日はもう寝ることにしよう。



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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。


関連サイト: 巫女ブラスター2 巫女ブラスター

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