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2014.11.2
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神緒のべるず 第12話 スワップ・アウト -4-



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キャー!
誰かが騒ぎ出すと、そこら中にいた女の子たち全員がパニックに陥る。

「里桜、悪いんだけど、全員を家の中に避難させて。急いで!」
「わ、わかった!」

私は里桜に頼んで、女の子達と主催者を家の中へ誘導させる。
私は黒い影に話しかける。

「やっとお出ましみたいね。さっきの『のぞき魔』さん? 何者かしら?」

黒い影は何も言わずに佇んでいる。
よくみると、黒い影は、先ほど全員が、それぞれお紛失した衣服やら装飾品やらを身につけていた。のぞき魔であり、窃盗魔であった。
どうも、あの黒いシルエットには見覚えがあるような気がするが…そんなことはどうでも良い。

「答えないなら、こっちから行くわよっ!」

私は懐より赤い札を取り出すと、それを投げようとする。すると、

「ちょ、ちょっと待ったー!」

里桜が叫んだ。

「何よ!?」
「そのエプロン、高いんだから、傷つけないでねっ!」

こ、この緊急事態に、なんて注文を付けてくれるかなぁ…。

ふと気付くと、黒い影が両手を伸ばしてこちらに近づいて来ていた。 まるでゾンビか幽霊じゃないか。
もう、すぐ近くだ! 足音もさせずに…!

「ちっ…!」

慌てて後ろへ下がろうとするが、間に合わない。
黒い手が私の首にかかり、思いっきり締め付けてきた。


「……シガ、………、…………………ノニ!」


黒い影が、何かを言っているような気がする。

里桜が、遠くから何かを叫んでいるような気がするが、強い妖力が近くにあるせいか、遠くの音がうまく聞き取れない。
すると、里桜がこっちに来ようかどうしようか、迷っている様子だ。

ダメだ。
こっちに来ちゃ、ダメだ。
声に出そうとするが、首を絞められていてうまく声にならない。

再び、黒い影が何かをささやいたようだが、やっぱり、聞き取れない。
何を言っているんだ! んもう、ハッキリしなさいよ!

そう思っていると、黒い影の顔が私に近づいて来て、耳元でささやいた。



「ワタシガ、ソコニ、イルハズダッタノニ!」


黒い手にこもる力が強くなる。
まさか、この影は…!

そう思ったとき、ふと、黒い手にこもる力が弱まった。
黒い影から「ヒッ」という、悲鳴が聞こえる。

見ると、里桜が後ろから黒い影に抱きついて、足やら腹やら胸やらをまさぐっている。

「やっぱりそうだ。コレ、姉さんだ。この体つきは姉さんだよ」

やっぱりそうか。この影みたいのは、明日香の生霊だったか。
そんなにも、このイベントに来たかったのか。

とはいえ、明日香自身がこんな暴力的な方法で乗り込んでくるとは思えない。
おそらく、本人の意志とは無関係に、強い思念だけが独立して行動を起こしてしまっているんだろう。

実際、今朝は、私が明日香を半『幽体離脱』状態にしちゃって来ているわけで、こういう状態にもなりやすかったってことか。


神緒のべるず 第12話 スワップ・アウト 挿絵うーむ、こうなったのは私の責任ってコトか…。
まあいいか。ちょうど今、里桜が後ろから抱きついていて、影は力を集中できなくなっている。
今がチャンスだ! 里桜のエロオヤジなスキルがこんなところで役に立つことになるとは!

「里桜、ちょっと、そのまま抱きついてて」
「りょうかーい。でも、なんか体の力が抜けてきたような気がするんで、急いでくれるとうれしいね…」

ああ、それは精気を吸われつつあるんだよ…なんてことは口には出さず、私は改めて赤い札を手に取ると、
衣服を傷つけないよう、影の額部分に札を貼ってやる。

影を形作っていた思念が急速に失われ始める。

おっと、カチューシャを外さなきゃ。
カチューシャを外して、里桜に「もう離れて良いよ」と指示する。
里桜が慌てて影から離れると、影はそのまま頭を抱えて苦しみだして…

 ボンッ!

という音と共に、四散した。
周囲には、紛失していたエプロンやニーソックスやリボンが落ちてきた。




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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。


関連サイト: 巫女ブラスター2 巫女ブラスター

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