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2012.6.17
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神緒のべるず 第13話 スワップ・イン -1-



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先週、睦(むつみ)に寝込まされてから一週間が経過し、今日は巫女コスプレイベントの日。
ちょっと早めに目が覚めてしまった私は、睦から借りた巫女服に袖を通して鏡の前でくるくる回っていた。

トントン、とドアをノックする音が聞こえ、「いいわよ」と声をかけると、妹の里桜が顔を覗かせる。

「姉さん、なんだかご機嫌みたいだね」
「ふふふ、そりゃそうよ」
「先週はドタキャンだったからね。それにしても、出発までまだまだ時間があるというのにもう着替えちゃって。歩きづらくない?」
「ううん、そんなことないわ。もう慣れたし」

そういうと、私は里桜の前でくるくる回ってみせる。

「大丈夫そうね」
里桜はウンウンと頷き、「あっ、そういえば」と言って
「で、姉さん、朝ご飯の準備ができたから、早く来てね」

私は「りょうかーい」と返すと、巫女服のまま部屋を出た。



事務所の入り口を通りかかったところで、ドンドンドンドンと、すごい勢いでドアを叩く音が聞こえる。

「こんな時間になんだろう?」と思いつつ、ドアを開けてみると、そこには小学生くらいの小さな男の子が立っていた。

息を切らし、ただ事ではなさそうな顔をしているので、私が「どうしたの?」と尋ねると、
「お、追われているんですっ! かくまって!」

なんてとんでもないことを言っている。事情は聞きたいが、聞いているヒマはなさそうだ。

私はひとまず「こっちへ」と台所まで案内し、そこにいた里桜に「この子を隠してて」とだけ伝えると、事務所の入り口まで戻る。
すると、ドタドタという激しい足音がして、ドアがガンガン叩かれた。

私は、『朝起きたばかりで不機嫌そうな顔』を作ってからドアを開けると、外には強面な男2人が立っていた。

やせ形でガラの悪そうな男と、ちょっと太っていてサングラスをかけている背の低い男の2人。
ヤクザかなんかか? そう思っていると、サングラスの男が「おい、ねえちゃん」とドスの聞いた声で話しかけてきた。

「これくらいの、男の子が、ここに尋ねてこなかったかい?」

私は、不機嫌顔を崩さず「さぁ、来ていませんけど。」と不機嫌そうな声で返した。
すると、やせ形の男の方が

「そんなはずはねえんですけどね? だってオレたち、この中に入っていくの、見ちゃったんだし」

と言いながら、足をドアの内側にめり込ませてきた。

ちょっと頭に来た。
「チッ、三流ヤクザが…」私はつぶやくと、その足を思いっきり踏んづけてやる。

やせ形の男はあわてて足をひっこめる。私は不機嫌声をさらに不機嫌そうにして

「だからさぁ、知らないって言ってるでしょ? なんかの見間違えでしょ?」

そう言ってやったが、男2人はなおもこちらを睨み続けており、引いてくれる様子はない。
どうしてやろうか…やっぱり、体でわからせるしかないのかなぁと思っていたら、ふと良いことを思いついた。
この服装をネタに脅してやろう。

私は懐より白いヒラヒラした紙の付いた木の棒(名前はよくわからないけど…)を取り出して、やせ形の男に話しかける。

「ところであなた、今日は肩が重いなとか思ってないかしら?」

男はビクッとする。意外にも効果てきめんなのかしら?
さらに追い打ちをかけるように、

「なんか憑いているみたいね。この場所にいると…そう、この場所は霊的にゴニョゴニョだから、早くこの場所を去らないとさらにゴニョゴニョ…」

語尾を濁らせ気味に脅してやると、やせ形の男は「ヒーッ」と言いながら走り去っていった。
サングラスの男も「お、覚えてやがれっ!」と言い残すと、そのまま走り去っていった。
こんなに効果があるとは思わなかったな。あの人達、過去に何か怖い目にでもあったことがあるのかしら?

そう思いながらドアを閉めようとすると、奥からさっきの男の子が出てきて

「お姉さん、ありがとう!」

と言いながら走ってきた。怖かったんだろうな。
私はしゃがんで、男の子の頭にポンと手を乗せると、

「よくがんばったわね」

と声をかける。そして、ゆっくり事情を聞いてみることにする。

「それで、あなた、お名前は? どうして怖い人たちに追われていたのか、教えてくれるかな?」

そう聞いてみると、男の子は急に私の手を握り、

「お姉さん、悪い霊の見える巫女さんなんでしょ? ちょうど良かった! ちょっと来て欲しいところがあるんだ!」

と言うと、いきなり私の手を握ったままドアの外に走り出した。

「いや、その、さっきのは…っていうか、そうじゃなくて…」

これはただのコスプレなんだけど…と伝えようとするが…あまりにも急いで手を引っ張られているもんで、言い出せなかった…。

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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。


関連サイト: 巫女ブラスター2 巫女ブラスター

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