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2014.11.2
Ayacy's HP


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神緒のべるず 第13話 スワップ・イン -5-



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悪霊を倒し、強面の男達からの「是非あっしらからお礼をさせてくだせい!」という申し出を断り、慌てて事務所に戻る。
コスプレイベントに遅れちゃう。

事務所に戻って慌てて時間を確認すると、まだまだ時間に余裕のあることに気付いた。
井戸の中で気絶したような気がしたけど、そんなに時間は経過していなかったんだなぁ。

と、ふと、ドアの近くにあった鏡を見たら……、なんか、頭の上に変なゴミが乗っかっちゃっているのを見つけた。
何かしら、これ? と、ひっぱってみたら、

「イタッ!」

うわ、これ、リアルなケモノ耳じゃない!?
マズイなぁ、キツネの霊を取り憑かせた霊障かしら…。そんなことゴロンは言っていなかったはずなんだけど…。

そんなことを思っていると、後ろから里桜が「姉さんお帰り」と話しかけてきた。
うわっ!と慌てて手で耳を隠す。

「どうしたの? 姉さん」
「あ、いや、その、なんていうか…。ただいま」
「おかえり。で、何かあったの?」
「何かあったって、その…」
「なんか、頭を押さえているみたいだけど…また先週みたいに、頭が痛いとか?」
「え?」

私は頭から手を離す。鏡を見ると、頭の上にはケモノ耳が乗っかっているのだが…里桜には見えないらしい。
そっか、自分以外には見えないのか。

「へんな姉さん」里桜はクスっと笑いながら、「朝ご飯、冷めちゃっているから、レンジで暖めてから食べてね」と言って去っていった。
まぁ、周りの人から見えないなら、良いか。

そういって、朝ご飯を食べようとすると、

「おーっす。 明日香、いるーー?」

睦が勝手に上がり込んできた。相変わらず、突然だなぁ。

「ちょっと睦、入ってくるんなら、呼び鈴を鳴らすかノックするかしなさいって、あれほど言っているじゃない」

と文句を言って、睦と顔を見合わせる。
睦の顔が、今にも吹き出しそうな笑い顔になって…。


神緒のべるず 第13話 スワップ・イン 挿絵「ぷーーーっはっはっはっは。なにそれ! ひゃっひゃっひゃっひゃ。 笑い、笑い死ぬ〜〜〜〜っっっっ!」

笑いやがった。

「ちょ、ちょっと、なんなのよ!」私がそう尋ねると、
「だって! 頭の上に、何それ?新手のコスプレ? いや、ネコ耳なら聞いたことあるけど、それはなに? げっ歯類? ひゃーっひゃっひゃっひゃ…」

「ちょ、これはキツネ耳だけど……って、睦にはこれが見えるの?」
「見えるも何も…って、え? 他の人には見えないの?」

睦はそう言って、私の頭の上に手を持ってくる。「あーなるほど」というと、「取り憑かれてんのか」と、あっさり理解してくれた。

「近所の公園の、火狐さんでしょ。まぁ、祓っちゃってもいいけど、悪意は無いみたいだし。そのまま高度なコスプレとして一生背負って行っても良さそうね」

「え? 知っているの?」

「ん〜。イタチとネズミが共同生活して、粟(あわ)を作っていたって昔話は知ってる?
 最後には、イタチが怒って、ネズミの歯を前歯以外全部抜いちゃった、って話なんだけど、あの公園の井戸は、そんなネズミの怒りを鎮めるために作られていたってわけ。
 で、いつしか本当にネズミの悪霊みたいなのが取り憑いちゃって………、たしか藻罪苦とか言ったかな? それを見た、網幹伝令之助っていう旅の坊さんが封じ込めたの。
 網幹伝令之助は、火狐と雷鳥を使役して、世の中のやっかい事を解決して回っていたみたいなんだけど……、って、その火狐がどうしてアンタに憑いているわけ?」

私は今朝のことを説明してやった。

「へぇ、アンタがねぇ。シロウトなのによくやるわぁ〜」
「もう!すぐに睦を呼びに行ければ良かったんだけど……、大変だったんだから」

本当に大変だった。今思えば、あのとき井戸に飛び込まなかったら、どうなっていたことか。

「でも、よかったわね。」

ふと、睦がそんなことを言ってくる。

「何が?」
「だって、これからはこのよろず相談屋も、オカルト系の相談を受け付けられるコトになったってことじゃない!」
「え〜〜〜〜!、もうあんな体験はイヤ〜〜〜〜!」


-おしまい-



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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。


関連サイト: 巫女ブラスター2 巫女ブラスター

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