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2012.6.17
Ayacy's HP


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神緒のべるず 第14話 そうだ!学校へ行こう -3-



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あたしたち2人は生徒会室のドアの前に立つ。
乃々華さんがノックをしようとしたので、あたしはそれを静止し、「乃々華さんは隠れてて。乃々華さんには、まだまだ会長の『味方』でいてもらわないといけないから」と言い、遠くに離れていてもらう。
そして、勢いを付けて、思いっきり、生徒会室のドアを蹴り開けた。

「ごめんあそばせ〜!」

と言いながら。バーンという音を立てて生徒会室のドアが勢いよく開く。そしてドアを蹴り開けた勢いで生徒会室に突入した。我ながら物凄いアクションシーンだ。ハリウッドよ!スカウトに来い!

「なっ! 何者ですっ!」

と、会長である千堂さゆりがこちらを睨みつけてくる。さっきはかけていなかった、赤い縁取りの目立つメガネをかけている。仕事時のみ、かけるメガネだろうか。
その会長のメガネが、少しだけ、ずり落ちる。少しの間、にらみ合いが続いた後、会長は指でメガネの位置を直して、あわてて悪口で応戦してきた。

「誰かと思えば、例の転入生の方じゃありませんこと。さすが、この学院に途中から入ってきただけのことはあって、行動がお下品ですこと!」

こちらも負けじと睨み返す。こういう極悪非道非人道的非人間的悪口嫌み極悪ババァには一歩も引いちゃいられない。

「おっと! 『お下品』というのは、どの口がおっしゃっているんですかね?
 人様の持ち物をボロボロにして隠す方が、よっぽどお下品じゃないんですかね〜?」

そういうと、会長は少し汗をかきながら、

「あっ、貴女の靴のことなんか知りません。何のことをおっしゃっていることやら」

と言った。あれは冷や汗だろうか。あたしは重要な証拠となる一言を聞き逃さない。あたしはニヤリとする。会長は、あたしに浮かんだ怪しげな笑顔を見て、少し慌てている。
うん、だって…、

「あたしがいつ? 靴って言った!? 知っているはずのない情報をしゃべったアンタが、犯人ってことで決定なのよっ!」

会長は黙り込む。もはや反論はできないようだ。顔を真っ赤にして、今にも怒りたいのだが、怒ることもできず、口を開くことができない。
もうこうなったら、こっちのペースだ。

「あたしに、こういう低次元低レベル低脳な『イジメ』みたいのは効かないから。泣き寝入りなんてしない。いつだって反撃しにきてやる。
 あたしはアンタに手を挙げることも躊躇しないからね。アンタ、親に殴られたことないんでしょ? でも、殴られたら痛いってのは知っているよねっ!」

会長はキーーーッと言いながらハンカチを噛んでいる。なんてベタベタなんだ。

「あ、あ、あ、あぁぁぁ、あなたに両親のことを言われる筋合いはありませんっ!」

とヒステリックに叫んでいたが、もう関係ない。
そこであたしは、今後の予定を、堂々と宣言してやることにした。

「あたしはアンタの性根をたたき直すために、今、空席になっている書記に立候補してやる。
 妨害したら許さない! もし妨害してみろ! その時はアンタのこと、本気で殴りに来てやる!
 ああ!! 早く殴りたいなぁ!! 次は筆箱でも体操着でも隠して見ろってんだ! このインテリめがね!」

そこまで言うと、生徒会室のドアを勢いよく閉め、あたしは生徒会室を出て行った。
生徒会室の入り口の周りには、でかい音と一連の騒ぎを聞きつけた野次馬たちがたくさん集まってきていた。
ウワサはあっという間に広がる。このパフォーマンスは、あたしの選挙戦にも有利に働くだろう。
面白い。とことんやってやるんだからっ!


……乃々華さんが、生徒会室に戻るためにドアに手をかけている。一部始終を見ていた彼女は、どうしたらいいかわからないでいるようだ。
生徒会室のドアの中からは、会長のヒステリックな声が響いている。
すまん、そして、がんばれ、乃々華さん。会長をなだめてやってくれ……。



翌日。あの騒ぎを聞いて賛同してくれた生徒達の協力を得て、選挙ポスター作りやビラ作りを始めることができた。
あの反撃を行ったおかげか、心配していた生徒会長による「イジメ」は、発生しなくなっていた。
あんなことであたしを陥れようなんて、百年…いや…千年早いってのよ。

ただ、陰湿なタイプの「イジメ」が無くなったものの、補選の演説会の場で、生徒会長が堂々と反対意見を述べる準備をしているらしいという情報が得られた。
乃々華さんからのリーク情報である。

乃々華さんは生徒会副会長という立場から、生徒会長におおっぴらに反対の立場を述べることはできないが、こうして生徒会長側の情報を時々教えてくれている。

一般的に、生徒会役員選挙は立候補者が少ないために信任投票となるわけだが、その前に、意味があるのか無いのかわからない『演説会』が開かれる。通常の役員選挙とか補選であれば、単純に立候補者が自己紹介や意見表明をしたりするだけなのだが、どうやらその場に生徒会長を始めとして生徒会役員達がズラリと並び、プレッシャーを掛け、討論みたいな形にしようとしているらしい。そして、あたしがぶざまな失敗をするところを全校生徒に見せつけようということだろう。

で、あたしに恥をかかせて、補選に失敗することはおろか、学校にすら居られないようにしてやろうって魂胆か。真正面から邪魔しようってわけね。いいじゃない。

2週間後、補選のための演説の日。
生徒たちが体育館に集められ、あたしの演説が行われる。

あたしは体育館のステージの上に立っている。ステージ中央にマイクが置いてあって、あたしはその前に立っている。
そのすぐ横に、「我々の仲間に加わろうとしている以上は、我々も立ち会わなければならない」というムリヤリな理由で、生徒会役員達がズラリと座っている状態となっている。青いシートのパイプ椅子に、足を組んで座っている生徒会長は引きつった笑みを浮かべこちらを凝視している。どうやら、こういう「立ち会い」は異例のことらしく、物々しい雰囲気に生徒たちがざわめいているのがわかる。まあ、これくらいでプレッシャーを感じるわけがない。むしろ、臨戦態勢となっていることへの高揚感が勝っている。

あたしがマイクに一歩歩み寄ると、生徒達の中からどよめきの声が聞こえてきた。「あれが満点の子ね」「生徒会長に真っ向から立ち向かったらしいわ」「無謀よ」「いや勇敢よ」等々…。

生徒達の声がある程度静まるのを待ってから、自分自身についての自己紹介、それから、この学校の校風のすばらしさに感銘を受けたことを説明し、転校初日から、それをさらに良くするために働きたいこと、生徒会役員として働きたいこと、等を、身振り手振りを交え、時間いっぱいまで必死にアピールした。
まぁ、ここらへんは乃々華さんから渡された文章を、ちょっとアレンジしながら読んでいるだけなのだが。

演説が一通り終わると、「ちょっと待ちなさい!」という声が、生徒会役員席の中から聞こえて来た。
生徒たちがしーんと静まりかえる。

あぁ、来たか。
生徒会長が立ち上がり、あたしに向かって叫んだというわけだ。

「貴方は、この学校のことが本当にわかっておいでですの?」

そう言いながら、生徒会長は役員席からこちらに向かって歩いてくる。このときの音を擬音にするならば「ズシン、ズシン」という言葉が似合っているだろう。BGMはゴ○ラのテーマだ。背中が光って口から光線を出しそうな勢いだ。

「貴方と初めて教室で会ったとき、あなたは私のことを知らなかったではありませんか?」

来た。理不尽光線。ああ、あのときのことを、まだ恨んでいるんだなぁ。さもしいったらありゃしない。
でも、こっちのペースで有利に進めるため、ちょっと怒らしてやるか。そう考え、あたしはあえて、嫌味な発言をする。

「千堂さゆり…さん…とか言いましたっけ? あのときはどうも。
 転校初日からとっても熱烈な歓迎を受けたおかげで、今ではしっかり覚えているわ。ここにいる生徒の皆さんも、しっかり覚えていると思うけど−!」

生徒達から、再度どよめきの声が聞こえてくる。一部からは拍手の音も聞こえてきている。それを聞いた生徒会長は、やはり怒り出す。

「『言いましたっけ』…ですって? 貴方はこの、千堂さゆりをバカにしているの?
 こんな物覚えの悪い人には、生徒会役員なんて務まりませんわ!」

生徒会長は、あたしの目の前に迫って来て真っ赤になって怒鳴っていた。
さて、ここはあたしの得意技で行くか。

あたしは生徒会長が一通り怒鳴り終わるのを待つと、「すーっ」と息を吸い、覚悟を決める。
そして、ひしっ、と、両腕を生徒会長の背中に回し、抱きついた。

「ひ、ひっ! 離しなさい!」

生徒会長が腕の中でもがく。ジタバタ、ジタバタと。
しかし、強気の女の子って、こうして不意に目の前の女の子に抱きつかれると、皆こうして、ちょっと弛緩して思考停止に陥っちゃうのである。
あたしは生徒会長の耳元で、やさしくささやく。

「さゆりさん、あなた、構ってほしかったんでしょう。
 生徒会長の…、リーダーの孤独と重圧って、かなり堪えるものですものね」

思考停止になっていた生徒会長の思考が慌てて復活し、混乱しているのがわかる。
生徒会長の体から、くたっ、と、力が抜ける。そして、涙声で、

「あ、貴女になんて…、貴女に、なにがわかるっていうのよ…」

と、ゆっくり、小さな声で言った。

「何かをやろうとしても理解してもらえなかったり、興味を持ってもらえなかったり、
 寂しかったこともあったんでしょう。
 大丈夫、安心して。これからは、あたしが全部相談に乗ってあげる。」

あたしは、そう言うと、生徒会長に抱きつく腕に、グッと力を込める。
すると生徒会長は泣きながら、

「うっ…、ぐっ…、ごめんなさい…。ありがとう…」

と言ってくれた。あたしも「うん、ありがとう」と返した。

すると、後ろの役員席で、パチ、パチ、と手を叩く音が聞こえてきた。

乃々華さんが立ち上がって拍手をしている。
拍手は他の役員や一般生徒達にも伝播し、体育館中が大きな拍手の音で包まれた。

投票はやらなくても結果はわかるだろう。満場一致で、生徒会書記になることができた。


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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。


関連サイト: 巫女ブラスター2 巫女ブラスター

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