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2021.1.12
Ayacy's HP


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神緒のべるず 番外編その1 疑似マルチコア -2-



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 窓の外を、鳥が滑空しているのをボーッと眺めている。あんな感じに、私もフリーダムになれればいいのになぁ…。

 ふっと我に返る。ここは高校のコンピ室。私は髪の毛を後で2つに分けて、紺色のブレザーに紺色のスカート、膝下までの白いソックス、そして白い上履きという、いわゆる指定制服の姿で、1人1台のパソコンが置かれた机の上で頬杖を付いている。

 高校で情報教育の授業を受けていた私は、授業があまりにもヒマなので、先生の声を聞かずにネットサーフィンをしていたんだっけ。周りを見回すと、左の子なんか寝ているし、右の子は爪のゴミを取っているし、後ろの席の子なんてコッソリ携帯電話でメールを打っているし。
 誰もこんな授業なんか聞いていないよね〜、なんて思っていたら、私の携帯がブルブルと震えだした。こんな時間に、誰からだろう?

 姉からだ。
 正確には、姉の使っているパソコンから発信されたメールが着信したのだ。
 私の姉は、もう27歳にもなるというのに、携帯電話を持とうとしない、すんごく古風な女性なのである。

 それはさておき、メールの内容を確認してみることにした。
 どれどれ?
 何? フリーソフトをダウンロードしてみたって?
 それで何? 世界を救わなくちゃいけない! なんだそりゃ?

 思えば、パソコンなんか全然できなかった姉が、親戚のお姉さんから色々教わって神社のホームページを立ち上げたのが7年前。それまで、パソコンはおろか電子機器類一切を扱えなかった姉が、いきなりパソコンを使ってホームページを作ろうと言い出したのだ。当時小学生だった私から見ても、異常事態であることは察することができた。
 あのとき一体何が起きたのか…姉に聞いても詳しいことは教えてくれないのだが、まぁそれでもなんとか、パソコンとインターネットは使えるようになったらしい。

 あ、言い忘れたが、私の家は家族で神社をやっている。
 父が神主。母は私を産んでまもなく亡くなったため、姉が私の母代わりをしてくれていた。ちなみに私と姉の間に、もう一人姉がいて、OLをやっているのだが、今回は割愛しておこう。まぁ、しみったれた話は置いておくことにして。

 そんなことより、メールの中身である。私は改めて、携帯に着信したメールの文章を読み直してみることにする。
 フリーソフトをダウンロードしたと書いてある。一体、何をダウンロードしたんだろう?
 っていうか、姉は7年間パソコンを使っていながら、未だに機械音痴から抜け出ていないというのに、フリーソフトを使おうとはなんたることか。もう少し、身の程をわきまえて欲しい…のだが、一人でフリーソフトをダウンロードができたことは、もしかしたら褒めてあげるべきことなのかもしれない。妹として。

 とにかく、一体何をダウンロードしたのか、聞き出す必要がある。幸い、目の前にはインターネットに繋がったパソコンが置いてあるわけだし、その気になればこの場で色々と調べることもできるだろうし。


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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。


関連サイト: 巫女ブラスター2 巫女ブラスター

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