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2021.1.12
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神緒のべるず 番外編その2 疑似クラウド -3-



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 姉に『疑似クラウド』を勧めてから数日後。その日は天気予報では晴れるという予報だったのに、どういうわけだか朝から空は曇っていた。なんとなく、悪い予感がする天気だった。まさかその予感が当たろうとは…。

 私が高校から帰宅すると、

 「楓〜! ちょっと来て〜!」

 姉から呼び出しがかかる。諦めてくれたかな?
 でも、姉の声は、なんだか、いつもより明るい気がする。諦めたと言うより、状況の進展を喜んでいるというか、なんとなく私の意図通りに事は運んでいないんだろうなという状況を想像させる声だった。
私はそんなことを不安に思いつつも、早く返事をしないと姉が怒り出すのも嫌だと思い
 すぐに姉の部屋へ行き返事を返す。

 「どうしたの?お姉ちゃん?」

 部屋の外から姉の姿を探すと、姉は自室でパソコンの画面を指さしている。
 見ろということか?

 姉の部屋の中に入り、パソコンの画面を除くと、そこには先日渡した『疑似クラウド』が稼働している様子が映し出されている。その画面を見る姉の目はうれしそうに輝いている。

 「ねぇ、見てよコレ、すごいよ! なんか、ますますクラウド導入したくなっちゃった!」

 なんでそうなるのよぉ〜〜〜!
 私は思わず心の叫びを口から出しそうになるのを必死に押さえつつ、作戦の失敗を落胆しながらも、顔を引きつらせながら会話を続ける。

 「そ、そうなんだ、お姉ちゃん。よ、よかったねぇ〜」
 「そうなのよ、楓。ほら、この大きいのなんか、すごく良いじゃない」
 「そ、そうだね…。(何が良いんだろう…?)」
 「ところで、さ。楓。ちょっと質問があるんだけど、いいかな?」
 「な、なに? お姉ちゃん?」
 「楓は、クラウドのことをよく分かっているのよね」

 …実は、私もクラウドってよく分かっていないんだけど…。今更言えない。

 「う、うん、もちろん。わかるよ。だからこのソフトを紹介したんだから!」
 「そう…」

 姉の目が細くなる。これは怪しんでいる目だ。

 「楓は、クラウドを使ったことあるのよね。」

 姉の背後に黒いオーラが見える…ような気がする。たぶん気のせいであることを祈りたい。

 「も、もちろんだよ、お姉ちゃん!」

 「じゃあさ、楓。クラウドって何なのか。この雲でどうしたらいいのか。教えてくれるかしら。詳しく。実例を挙げて。」

 姉の背後のオーラが心なしか濃くなったように見えた。ヤバイ。目の錯覚じゃなかったみたいだ。
 …マ、マズイ…。バレる…。

 「そ、そう。お姉ちゃん。クラウドってのはね。そうね。……そう! 上空にある雲を伝って、情報を伝達するんだよ。だから、雲に乗るための靴があって、それを使って、ほら、SDカードに入れた情報を遠くまで運んで…」

 ムんズッ。
 ふと見ると、姉が私の着ている服のクビの後ろのところを掴んで持ち上げている。
 姉の指がひんやりと冷たい。

 「じゃあ、実例を見せてもらいましょうか。ジェットコースター嫌いの楓ちゃん!」

 い、いやぁぁぁぁぁぁ!



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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。


関連サイト: 巫女ブラスター2 巫女ブラスター

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