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2021.1.12
Ayacy's HP
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神緒のべるず 第3話 御神楽IT革命 -4-
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一仕事を終えた睦は、「ふぅ〜」と息を吹いた。
「さて、バケモノも退治したことだし、帰りましょうかね」
「それで睦、私たちはどうやって帰ったらいいのかしら…?」
「それはね…」
睦は懐の中をさぐる。
「あれ…?」
何かを探しているようだが、見つからないようだ。
「何を探しているの?」
「えっと、ここに来るときに使った緑色のお札。あれを破くと、私たちは外へ出られるんだけど…」
「もしかしたら、パソコンの外に置いて来ちゃったんじゃ?」
「そ、そうかも…」
「えーっ!?」
どうやら、パソコンの中に閉じこめられてしまったようだ。
あれからどれくらい経っただろうか。
体感的には1時間くらいは経ったような気がする。
1つわかったことがある。
パソコンの外の様子が、何となくわかるようになってきた。
少なくとも、外の音は伝わってきているようだ。
耳を澄ませると、神社の近くを通る車の音が、少しだけ聞こえてくることがある。
「とは言っても、こっちから何かを伝える方法がないと、ダメなのよね…」
すると、そとからドアを開ける音が聞こえてきた。
「ただいま〜。」
「あれは巴の声だ」
巴はしばらくの間、何かを探すように周囲を歩いているようだ。
「う〜ん、姉さんったら、どこへ行っちゃったのかしら。
パソコンつけっぱなしで…。もったいないなぁ。電源切っておこう」
う、うわ、やめて。電源切ったら、私たちもろとも消えて無くなっちゃう…気がする。
とにかく、無事に済まない気がする!
「うわぁぁ、どうしたらいいかしら!」
「巴が緑色のお札に気付いてくれたら良いんだけど」
ふと、私は気付いた。巴はたしか、携帯電話を持っていたはずだ。
メールを送ることができれば…。
「睦! メールよ。巴にメールを出せば良いんだわ」
「なるほど。その手があったわね。
……あのミューはどこへ行ったかしら。あ、いたいた」
ミュ〜っ
「そこのミューさ〜ん! こっちこっち!」
「なんですかミュー」
「ちょっとお願いがあるんだけどさ。急ぎで、メールを出したいんだけど」
「わかったですミュー」
「助かったー」
私と睦は安堵した。これで何とか、外へ出られそうだ。
が、すぐにとは行かないようだ。
「お姉さん達、なんかお困りのようですミュー。みゅみゅみゅみゅ…」
奇妙な笑い方をしている。
私は、不安になって聞いてみる。
「みゅみゅみゅ。交換条件ですミュー。みゅみゅみゅ」
こ、こいつ。何を企んでいるんだ?
「簡単ですミュー。こう見てもボクは健全な男の子ですミュー。外へ出たら、エロ画像をこのパソコンでたっぷり集めてきて欲しいですミュー」
「なんですって!」
睦が叫ぶ。
「あ、イヤならいいんですミュー。お姉さん達、このまま消えちゃえばいいんですミュー」
「あ、あなた…、こっちの状況をわかっていてそんなことを…」
ま、まぁ仕方がない、外に出られることと比べれば、そんなに難しいことじゃない。
難しいことではないが…恥ずかしい…。
睦が意を決する。
「ま、まあいいわ。私が外に出たら…その…それを集めてきてあげる」
「え? 何を集めるんですミュー? お姉さんの口から聞きたいですミュー」
「ク、クッ…!」
「イヤならいいんですミュー」
「わ、わかったわよ! エロ画像を集めりゃいいんでしょ、エロ画像!」
「オッケーですミュー。それじゃ、お姉さん達には、さっそく外へ出てもらうんですミュー」
ミューはどこかへ行ってしまった。メールを出してくれているようだ。
外から巴の声がする。
「え? なになに? メール? ああ、このお札を破ればいいのね」
ビリビリ。
ふと気付くと、パソコンの外へ出てきていた。
どうやら無事に外へ出られたようだ。
「良かったー」
「助かったー」
私たちは、口々に安堵の声を上げる。
「姉さん達、お帰りなさい」
「ああ、助かったわ、巴」
「お邪魔してます...」
「あら、明日香さん、ごくろうさま」
ところで…。
ミューとの約束を思い出す。
「あいつのために、アレを集めてやらないといけないのよね。不本意だけど…」
私と睦がパソコンの方へ向かおうとし、パソコンの方を見ると、…
巴が電源ボタンを長押しして、電源を切っていた。
ぷぅ〜ん…というモーターの静止しようとする音が、むなしく響きわたる。
「「あ…!」」
思わず私と睦の声がかぶる。
すると巴が、
「あぁ、なんかね。姉さん達が中に入っている間から、ずっと動きが遅くって。
姉さん達が出てきてから、もう完全に動かなくなっちゃったみたいなんで、電源源切っちゃった。」
あわててパソコンを再起動してみる。
ちょっと見た感じでは「ミューなんとか」というプログラムは動いていない。
どうやら、パソコンの電源を切ったのと同時に、消えて無くなってしまったようだ。
哀れ、ミューなんとかさん。パソコンの動きを遅くするくらい、はしゃいでいたのかしら…?
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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
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