Written in Japanese(UTF-8)
2021.1.12
Ayacy's HP
2021.1.12
Ayacy's HP
/葦葉製作所/トップ/小説目次
神緒のべるず 第8話 おるる☆すくらんぶる -1-
前へ / 目次へ
「それじゃあ、おるるさんは、過去の時代から、その首飾りについた赤い石を通して、楓の体を操っているってことなんですか?」
巴が、これまでの会話を分析して、判明した結果をまとめてみた。
「そういうことになるのう。この時代の言葉で、どう表したらよいのか…困っていたのだが…、お主は賢い」
楓——に憑依したおるるが巴を褒めた。つまり、要約すると、こういうことになる。
おるるは、私たちが、武具の修理のために過去に遡ったときに聞かされた話———自分に似た少女が、未来に存在していると言われたこと———でひらめいて、一つの実験を試みたのだという。
それは、楓の体に憑依する形で、私たちの時代にやってくるというもの。
おるるの予想通り、楓の体は、おるるの心とのシンクロ率が非常に高いらしく、比較的容易にシンクロすることができた。
ただ、おるるの期待に反して、赤い石がしばらくの間、放置されてしまった。そのため、放置された分だけ石の力が弱まり、シンクロするのに時間を要してしまったのだとか。
そこまで聞くと、睦は、
「それで、楓自身は無事なんでしょうね?」
といぶかしげな表情をしながら聞く。やはり、楓ちゃんの身が心配なようだ。
それを聞いた楓——に憑依したおるる(うーん、面倒くさい。以下、「おるる」と表記)は、
「それならば問題ない。わらわの意志一つで、楓の心は戻ってこようぞ。
ただ、わらわがこの娘に完全に憑依するには、もう少しこの石が娘のそばにある必要がある。完全に憑依できれば、あとはこの石がなくとも、自由にこの娘に憑依することができるようになる」
と、誇らしげに語った。
憑依だなんて、なんだか物騒な感じがする。睦も同じことを思ったようで、うなずきつつも、何か考えているようだ。おそらく、楓から石を遠ざける手立てを考えているのだろう。
すると、おるるがこんなことを言い出した。
「ところで…、お主らが江戸の街を見物したように、わらわもこの世の中を見物してみたい。
ただ、その前に、この時代がわらわの居た時代からどう変わってきたのか、聞いてみたいのじゃが…よいかの?」
それを聞いた睦は、
「いいわよ」
と返事をする。ただ、
「でも…、歴史はあんまり得意ではなかったのよね…。
そうだ、巴。ちょっと、学校の歴史の教科書かなんか、取ってきてよ」
と言った。すると、巴は、
「江戸時代以降の歴史なら、教科書がなくても、だいたいわかるよ」
と言い、江戸時代から現代までの歴史の要約を、わかりやすく、おるるに説明した。
さすが優等生。
それを聞いたおるるは「なるほど」とうなずき、
「それならばなおさら、現代の世の中がどうなっているのか、気になってきた。早く見物させてくれ」
とウズウズしながら言った。睦はちょっと思案した後、
「それじゃあ、まさに現代を象徴するお店に連れて行ってあげましょう」
とニヤニヤしながら答えた。そして、
「外に出て待っててね。ちょっと準備してから行くから」
と言い残し、家の奥へ入っていった。巴は、
「それじゃあ、外へ出て待っていましょうか」
と、おるるを外へ案内し、私も一緒に外へ出て、睦の準備を待つことにした。
次へ / 目次へ
※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
関連サイト: