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2021.1.12
Ayacy's HP
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神緒のべるず 第9話 遊園地大戦 -3-
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楓ちゃんが回復するまでの少しの間、近くのベンチで休むことになった。
このまま休みっぱなしというわけにもいかないため、巴が別行動を提案する。
「あたしたち3人は、このベンチでしばらく休んでいますので、光大朗さんと明日香さんと里桜さんは、先に他を回っていてください。
午後になったら、楓が観たいと言っていたヒーローショーがあるみたいなので、そこで落ち合いましょう」
というわけで、睦と巴と楓がベンチでもう少し休み、私と里桜と光大朗さんは他を回ることになった。
「それにしても、すごい叫び声だったね」
里桜が、楓ちゃんの叫びに感想を述べていた。
「そうね。きっと、遊園地を一番満喫できたんじゃないかしら。それにしても、睦も大変ね」
と私がいうと、光大朗さんは
「まあ、自業自得だろう。楓ちゃんには悪いが、あんな叫び声を隣から上げられていちゃ、気が気じゃなかったろうし。」
と、金を出させられた腹いせ的な発言をしていた。
その後、私たちは、いくつかの室内アトラクションや、水のかかるアトラクション、体感型アトラクション、工場火災を体感できるというアトラクションを回った。
ちなみに、4Dなんとかと付く名前が多かったが、どうやら視覚(3D)と体感をあわせて4Dということにしているらしい。
…と、いくつかのアトラクションを回った後ところで、待ち合わせ時間が近づいていることに気づく。
というわけで、待ち合わせをしているヒーローショーの場所に向かうことにした。
ヒーローショーの行われる場所は、今いる位置からは少し遠いので、少し小走りにその場所へ向かうことにした。
この場所から向かうのだと、ちょっと遅れてしまうかもしれない。まあ、少しくらい遅れても問題はないだろう。
会場の近くへ到着した。入り口近くから中をのぞいてみると、どうやらまだヒーローショーは始まっていないようだ。
しかし、開演時間は、すでに過ぎている。
なんだか中でザワザワと声が聞こえて来ている。何かあったようだ。
どうしたんだろうと思ってその場で観ていると、クイックイッと袖を引っ張られる。
楓ちゃんだ。
「大変なことになってるの! すぐに来て!」
楓ちゃんが走り出した。
なんだかよくわからないが、とりあえず、私たちは楓ちゃんの後ろからついて行くことになった。
「えーっ! 出演者の到着が遅れてるの!?」
里桜が驚いて叫ぶ。
「それで、なかなかショーが始まらないってわけね」
と、私がうなずく。
「ところで、それでどうして俺たちがこんなところにいるんだ?」
光大朗さんが当然の疑問を口にする。
そりゃそうだ。私たちが楓ちゃんに呼ばれて到着したのは、出演者の控え室である。開場の遅れの理由はわかったとして、どうして私たちがこんなところにいるんだろう?
「それはねぇ。かえでが代役を引き受けたからなんだよっ!」
楓ちゃんが、エッヘンと胸を張って答えを言う。
「「ええーーーーーーっ!!」」
私たちが素っ頓狂な声を上げていると、巴がなにやらノートを持ってくる。
「台本は、こんな感じですからね。細部は適当に。それと……最後までは書いていないんだけど…、後半は流れに乗せて、適当にお願いしますね」
巴は急ぎ、台本の概要を伝える。
て、適当って…。
「そう…。やるっきゃないのね」
里桜が意を決して、立ち上がる。里桜と巴と楓ちゃんが、「うん」とうなずきあう。
へ? みんな、行っちゃうの? っていうか、もう頭に入ったの?
「まぁ、成り行きにあわせて、適当だね」
里桜が、なんだか楽しそうにしている。すると、睦が出てきて、こんなことを言う。
「えっと、一番肝心なのは、この部分だから。前に観たと思うけど、それに2人が加わる感じね」
睦が、私が考えたのよ、と台本を指さす。
「ヒーローモノの番組はね。始まってから半年経つと、新しい隊員が登場するの。これも、そんな感じね」
楓ちゃんが、さりげなく豆知識を披露してくれる。
すると、奥からスタッフが「すみませーん、お時間です。スタンバイお願いしまーす!」と呼びに来た。
「「はーい」」
里桜、睦、巴、楓ちゃんの4人は、そろって声を上げた。
「それじゃあ、俺はここで見ているからな。みんな、がんばってこいよ!」
光大朗さんが、そんなことを言っている。
「「はいっ! 隊長っ!」」
隊長かよ。
うろたえている私に、里桜が声をかける。
「姉さんも、そろそろ覚悟してね。行くっきゃないわよ」
えーっ!? そんなのって…アリぃー!?
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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
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