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2021.1.12
Ayacy's HP
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神緒のべるず 第10話 迷子の迷子の睦さん -3-
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待てど暮らせど、明日香はやってこなかった。
まさか、明日香まで迷子になってしまったのかしら? それとも、約束をすっぽかして別の場所に行っちゃったとか?
そうだったら許せん! 元々はあの子のせいなのに!
そう思うと、妙にイライラしてきた。あの子が約束をすっぽかしたことなんか、これまでに一度も無かったけど、まさかこんな時に、初めてのすっぽかしを食らう事になるなんて!
そう考えると、イライラが倍増してきた。
「この壺ね。この壺の中身が悪いのね…。」
「そうですよ。ボクがこの壺から解き放てば…」
怒りがどんどんわき上がる。
「壺の中身を滅殺するっ!」
「ひ、ひっ!」
妖怪がそんな声を上げるや否や、全身全霊で壺を地面に叩き付けて割った。
バリーン!と、キレイな音と共に豪快に割れる壺。
壺から解放された妖怪は、早速逃げ出す。「ひィーーーーーーッ!」
「待ちなさい~~~~~~~~っ!」全力で追いかける。
なぜ、わざわざツボの中なんかに閉じ込めて、妖怪を連れて帰らなければならないのか!
誰かから、この妖怪を生け捕りにすることを求められていたわけではない。ただ、どうしても滅殺しないでくれと懇願されるから、生かしておいているだけなのだ!
「あんたを生かしてるからこうなるんだわー!滅殺!」
「ぎゃー!」
めちゃくちゃに逃げるので、めちゃくちゃに追いかける。
塀の上に逃げれば、塀の上まで追いかける!
屋根の上に逃げるなら、屋根の上まで追いかける!
テレビを見ている子供達がいる居間の中を走り抜けた気がするし、ラーメンを食べているおじさんの家の中も駆け抜けた気もするし、犬小屋の中も通った気がするし、とにかく道があるところも無いところも、駆け抜けた気がする。
そんな途中経過はどうでもいい。あとちょっと!あとちょっと!
よしっ!捕まえた!
妖怪のしっぽを握って、捕まえた!
「ひぃ~~~~~~っ! お助けをっ!」
気づけば、そこは自宅の玄関の目の前だった。
すぐ近くに神社もある。
なるほど、目的地を目指して冷静に歩こうとするからダメだったんだわ。心を無にしてめちゃくちゃに走れば、なんとかなるもんね。
「それじゃ、僕はお役御免ですね。じゃー!」
「じゃー…… じゃない!」
しっぽをつかまえる手に力を込めて。
神社の物置に仕舞ってあった手頃な壺に再封印してやったわ。
それにしても、今日は走りまくって、グッタリ疲れたわぁ。
走り回るので疲れたし、再封印で霊力も使い切っちゃったし、ちょっと一眠りしようかしら。
おやすみなさい。
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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
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