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2021.1.12
Ayacy's HP
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神緒のべるず 第4話 温泉探偵 -1-
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私と妹の里桜が、買い物から帰ってきた。
「ただいま戻りました〜」
そう言いながら、妹の里桜が探偵事務所のドアを開けて中に入る。
私も続けて中に入ろうとすると、里桜がいきなり飛び出してきた。
「ね、ね、ね、姉さん!姉さん! ついに光大朗さんにも春が訪れたよ!」
「どうしたのよ、一体?」
私がドアの中に入ると、事務所の奥にある応接用のソファーに和服の綺麗な女の人が座っていて、所長の光大朗さんと歓談していた。
「あの方は、普通にお客様でしょう」
「で、でも、あんなに仲良くお話ししているし…。ただのお客さんじゃないよ。絶対!」
「わかったわ。さりげなく、様子を探ってみましょう」
私は光大朗さんに
「お茶を取り替えますね」
と言いながら近づき、和服の女性にご挨拶をする。
和服の女性は軽くこちらに会釈をする。なんとなく美しい身のこなしだ。
ただ者ではない気はする。
和服の女性と光大朗さんの会話は、どちらかというと、仕事の話というよりは談笑といった感じで、「あの人は最近どうですか?」とか「最近腰が痛くて…」みたいな話をしているようだ。
2人分のお茶を取り替えて下がろうとすると、光大朗さんに呼び止められた。
「明日香、ちょっと話があるから、ここに座ってくれ。
里桜も、そこに座ってくれ」
光大朗さんの指示で、私は光大朗さんの隣に、里桜は和服の女性の隣に座らされる。
一体、何の話があるのだろう。
「実は、仕事の話についてだ。今回のクライアントは、こちら……節子(せつこ)さんだ。
節子さんは、うちを懇意にしてくれているクライアントが、よくお世話になる温泉旅館の女将さんでね。
俺もたまにその旅館には行くので、すでに知った仲なんだが、今日は節子さんが依頼人として来てくれたわけだ」
なるほど。それで、さっきの談笑みたいな会話になるわけだ。
そこで、節子さんと紹介された和服の女性が口を開く。
「それじゃあ、仕事の内容については、私の方からさせていただきますね。
私は、山奥で小さな温泉宿『ききょうの宿』を経営しております、節子と申します。」
私たちと節子さんで、軽い自己紹介を済ませると、いよいよ仕事の内容に入る。
どうやら、節子さんの経営する温泉宿に、最近、新しい従業員が入ってきたのだそうだ。年は40代くらい。その従業員は非常によく働き、休日もあまり遊びに出ることがなく真面目なのだが、どうも過去の経歴をかたくなに隠しているのだという。
その過去の経歴を探って欲しいというものだ。
「謝礼といたしまして、当旅館へ4泊5日の無料ご宿泊のご招待をさせていただきます。
もちろん、料理は、当旅館で一番の海の幸・山の幸の特別コースをお付けいたしますわ」
この寒い季節にタダで温泉に入れて、料理も豪華だなんて、なんてすばらしい報酬なのかしら。
「というわけだ。俺と、お前ら2人の、合わせて3人で、温泉宿に5日間宿泊をさせてもらう。
その間に、その謎の従業員の過去を探りだそうというわけだ。いい話だろ?」
というわけで、私たち3人は早速、その温泉宿へ向かうことになった。
「うわ、寒ぅぅぅぅ〜〜〜〜」
里桜が叫ぶ。
温泉宿に到着すると、辺り一面が真っ白な雪景色だった。
寒いときに温泉に入るのは大好きだが、温泉に入るまでが嫌いだ。
まずはこれから5日間、宿泊する部屋に案内してもらう。畳張りの和室で、雰囲気が落ち着いていて良い。
壁の染みまでもが、良い雰囲気を演出しているようだ。
「じゃ、さっそく温泉に行きましょうか。」
私がそう言うと、光大朗さんも
「そうだな。実際にその従業員に接触するのも、温泉の後だ」
と賛成してくれ、3人で温泉へ行くことになった。
ちなみにもちろん、混浴ではない。
私と里桜はすばやく体を洗い終えると、さっそくお湯に浸かる。
ふぅ〜気持ちいい。
「そういえば、里桜と一緒にお風呂に入るなんて、久しぶりね」
そう言いながら、私が里桜の方を振り返ろうとすると、里桜がいきなり後ろからガバッと襲いかかってきた。
私は思わず
「きゃあ!何するのよ!離しなさいっ!」
と叫ぶ。すると里桜は、
「こらこら姉さん、あばれな〜い、あばれな〜い。身体検査ぁ〜」
そう言うと、あろうことか、私の胸を揉み出した。
「ふむふむ。なんだか前より大きくなっているね。もしかして、恋でもしているんじゃない?」
お、お、お、おいおいおい。私は真っ赤になって
「んなわきゃないでしょ!っていうか早く離しなさいっ!離せぇ〜っ!」
と叫ぶ。すると、ようやく里桜は手を離した。
「ふーん、残念」
里桜はそういうと、しかしニヤニヤしながら去っていった。
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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
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