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2021.1.12
Ayacy's HP
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神緒のべるず 第17話 プリンセスの休日 -3-
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ハンバーガーショップに到着し、レジの前に並ぶこと数分。ようやく注文できるところまでたどり着いた。
睦は、並ぶことに慣れていないであろうエリカ様が怒り出すのではないかと内心ヒヤヒヤしていたが、幸い、エリカ様はキラキラした店内装飾に気を取られ、怒り出すことはなかった。
「どれがお勧めかのぅ」と、エリカ様が楓に尋ねる。
楓は「そうだねぇ。このテリヤキバーガーのセットメニューが、いいんじゃないかな」と答えた。
「よし、それにしよう。おい、そこの給仕!テリヤキバーガーのセットを頼んだぞ!」
そういうと、その場を立ち去って、エリカ様はどんどん歩いて行ってしまった。
楓が慌てて呼び止める。
「まって、まって!ここではセルフサービスなんだよ。自分で料理を運ぶの!」
「そ、そうなのか。そうしないと食べられないのか。では、そうすることにしようかの…」
エリカ様はしぶしぶ、レジの前まで戻ってきた。
少し待って、テリヤキバーガーのセットを受け取って、席に着いた。
「よし、それでは、食べることにしようかのう。おい楓、ナイフとフォークはどこじゃ!」
「違うよ、手で食べるんだよ…」
「お!それは面白い。では…」
エリカ様はそういうと、ハンバーガーを手に持ち、パンと肉を分離し始めた。
「おお、このパンは旨いのぅ。焦げ目の付き方がたまらん。旨い、旨い!」
エリカ様はパンをむしゃむしゃ食べていた。
その光景を睦は、
「ははは、気に入ってもらえたみたいね。」
と、微笑ましく見守った。
「それで、この中の生臭いのはなんじゃ。楓、お前にやるぞ」
エリカ様は、中の肉をつまみ出して、楓の前に放り投げた。
楓は「お肉が一番美味しい部分なんだけどなぁ…」と困惑している。相変わらず行動が不明なお姫様だなぁと思う。
「ところで、このシュワシュワする飲み物の中に入っている小さい氷が旨いのぅ。おぬしのも寄越せ!」
そう言うと、エリカは楓のコーラの蓋を開けて、氷を食べ始めた。
「うわぁ、ちょっと待ってよぉ…。」と半泣きの楓を見て、
「これも、心の修行なのよ!がんばれ楓!」
と、心の中で応援する、睦であった。
三人で帰宅すると、巴が
「ドレスのクリーニングが終わったって」
と言いながら、ドレスを手に持っていた。真っ白に、キレイになっている。
「さすが、本場のメイドさんによる仕事は、早いし正確ね…」
と、睦は納得し、キレイになったドレスを受け取る。
「さて、エリカ様、早速こっちに着替えちゃう?」
クリーニングから戻ってきたドレスを指さして、睦がエリカ様に尋ねると、エリカ様は首を振って
「いや、わたしはもうしばらく、この…巫女装束…とやらを着ていたいぞ。そのドレスは、おぬし!楓が着るのじゃ」
「え!?着させてくれるの!? やった!!」
楓は喜んだ。まさか、こんなにキレイな、お姫様みたいな格好ができるとはなぁ。
というか、本物のお姫様である。
早速着替えてみた。
「サイズぴったりだね」と楓。
「そりゃ、おぬしのこの…巫女装束…とやらを、わたしが着られたからのぅ。おぬしもわたしの服が着られると思っておった」
「さすがだね!エリカ様! それじゃあ、これでまた遊びに行こう!」
楓がそういうと、睦がそれを制して言った。
「ちょっと待った、そろそろ夕飯の買い物に行こうと思っていたのよ。あんたたち、一緒に来なさい」
近所のスーパーに、夕飯の買い出しに行く。
色んな商品が陳列されているのを、エリカ様はキラキラした目で見回す。
「ほぅ、すごいのぉ、すごいのぉ。こんなに色んな物が置いてあるのか」
そういいながら、手近なところにあった商品に手を出そうとする。
楓は慌てて制する。
「ダメだよ。買う物以外は手に取っちゃ、ダメなんだから」
それを聞くと、エリカ様はつまらなそうに
「ちぇ…!そうなのか。」
と言ったと思いきや「…と、あっちには何があるのかのぅ…」と走り出した。
「ちょ、ちょっと待って~!」楓は慌てて追いかけた。
それを目で見送って、睦は「楓もお姉ちゃんっぽくなったわね…。」と、妹の成長に感心するのであった。
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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
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