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2021.1.12
Ayacy's HP
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神緒のべるず 番外編その4 真・疑似ごみ箱 -1-
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「ケホッ、ケホッ…。
…うぅぅ〜。あ〜、もう〜。せっかくの日曜日だってのに、なんでこんなことやらされてんのよぉ〜」
今日は日曜日。早朝。高校はお休み。
せっかくのお休みを、友達と遊んで過ごそうと思っていた矢先、一番上の姉、睦姉さんから用事を押しつけられたのだ。
あれは金曜日の夜のこと。
「あー!楓−! ちょっと、ちょっと。こっちこっち、来なさい。ほら、そんな嫌そうな顔しないの! ほらほら」
お風呂に入ろうと廊下を歩いていると、睦姉さんからこんな感じに呼び止められた。
こんな感じに睦姉さんから呼び止められた場合、大抵は、面倒事を押しつけられる。嫌そうな顔にもなろうってものだ。
「あんたも高校生になったんだしさ。そろそろ、神社の蔵の整理をやっても良い時期だと思うのよ。うん、そうそう。やるべきよ。
虫の声もよく聞こえるし、ほら、蔵の整理もやりやすい季節じゃない。それじゃあ、日曜日に、よろしくね〜」
こうして、私のつつましやかな日曜日の計画は潰され、今こうして、神社の蔵の整理をしている。
そこら中、カビとホコリだらけ。
睦姉さんも高校生の頃は蔵の整理をしていたんだそうだが、その頃のことは、あまり多くを語りたがらない。何かあったんだろうか。
この蔵には、200年以上前のものから、比較的最近のものまで、色んなものが入れられている。
歴史的価値のあるものもあるらしいが、最近入れられたものは、すでに使われなくなった家電だったり、小さい頃に遊んだオモチャだったりする。家電の中には壊れて動かなくなったものもある。
そういえば私って、小さい頃、姉のしごきに耐えられなくて、ここに忍び込んで神具を奪って逃亡したっけなぁ。あれは懐かしいなぁ。今でもたまにやるけどなぁ。
そんなことを考えながら、蔵の整理に精を出す。
「あ、これ懐かしい」
小さい頃に遊んでいた、小さな人形を見つける。
パンパンと、手でホコリを払うが、もうだいぶ黒くなってしまっている。
「……とすると、このあたりは……」
この人形が置かれていたあたりは、比較的最近、蔵に入れられた古いオモチャだったり、使われなくなった家電だったりするわけか。
見回すと、壊れて動かなくなったと思われる掃除機とか、古そうな冷蔵庫、扇風機、ノートパソコン、なんだか色々あるじゃないか。
ところで私の役割は、比較的最近、蔵につっこまれたゴミを外に出し、粗大ゴミとして出すことである。
ってか、睦姉さんが蔵の整理をしていたときは、これらのゴミをなぜ粗大ゴミとして出さなかったのだろう?
なんで、私が蔵の整理をするまで、こういうものが残っているんだろう。
もしかして、私が片付ける必要なんかないんじゃないか?
なんとなく不公平感を感じる。
「っていうか、冷蔵庫なんか、どうやって外に出すのよ…」
圧倒的な不条理に怒りすら感じてくるわけだが、そこはちょっとした、マジカルなパワーを利用して外に出すことにしようかな。
そう考え、ポケットより黒い御札を一枚取り出して念を込める。念を込めた御札が淡く光り出したところで冷蔵庫に貼り付けると、冷蔵庫は床より1センチくらい浮かび上がった。
「よしっ。あとは、これを蔵の外まで誘導して…っと。………あっ!」
ちょっと力の入れ方を間違えた!
冷蔵庫が、ふわりと、一気に天井まで上がっていき、天井にぶつかって落ちてくる!
落ちてきた衝撃で冷蔵庫が床に倒れ、周辺にホコリがぶわっと舞い上がる。
「あちゃー…、やっちゃったー…」
やばいなぁと思いつつ、床を見てみると………。あれっ? さっき床に落ちたはずの冷蔵庫がない。
どこへ行ったんだろう?
冷蔵庫が落ちたはずの場所を見てみると、そこには、周辺のものとは不釣り合いな、緑色の、光沢を帯びた、上部の空いた箱のようなものが置いてあった。
箱の前面には、青い3つの矢印で三角形が描かれており、何かの魔方陣のようにも見えるが、効果のほどはよく分からない。
これはおかしい…。
試しに、ポケットからティッシュを一枚取出し、その箱の中に放り込んでみる。
するとどうだろう。箱の中がうっすら光ったかと思うと、箱の中に入れたはずのティッシュは、跡形もなく消えてしまった。
これはもしや……。
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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
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