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2021.1.12
Ayacy's HP
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神緒のべるず 第7話 お姉ちゃんの誕生日 -5-
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楓ちゃんが倒れてから、1時間くらい経過しただろうか。
ようやく呼吸も落ち着きはじめ、体温も下がってきた。
今は、畳の上に寝かせており、タオルケットを1枚掛けている。
ただ、赤い石を握る手の力が弱まる様子はないようだ。
まったく……、どうなってしまっているのだろうか…。
睦は、緑色の札を目の前に置いて、悩んでいる。
「う〜ん、そろそろ、使うべきかなぁ」
たしか、以前、パソコンがウイルスに感染したときに使っていたのが、緑色の札だ。きっと、対象物の中で実力行使をするために使う札なのだろう。
巴は、お茶のおかわりを持ってきてくれた。
「すいません、なんか、変なことに巻き込んじゃったみたいで…」
巴が申し訳なさそうに、そんなことを言う。
私は、
「いいえ、いいのよ。私も、何もお手伝いできなくて…」
普通の病気ならば、看病のしようもあるだろうが、こういった人知を越えた出来事では、どうしようもない。
どう手を施したらよいかわからないし……様子を見守るしかない。
すると、楓ちゃんの手が、ピクッと動いたような気がした。
「今、動いた?」
私がそう言うと、睦が楓ちゃんの肩を揺する。
「かっ、楓? 楓? 目が覚めた?」
すると、楓ちゃんは半分だけ目を開けて、眠そうに周囲を見回している。
そして、睦の方をじーっと見つめて、ぼそりとつぶやく。
「ここは…どこじゃ?」
睦は、
「家の中よ? 目が覚めたのね。 さっ、その握っている石を、こっちに」
と言いながら、手を差し出す。しかし、楓ちゃんは、更に強く石を握りしめて、言う。
「それは、お断りじゃ。もうしばし待て。完全な同調までもう少し時間がかかる…」
そういって、楓ちゃんは首を左右に何度か振る。
その様子を見ていた巴が、
「なんか、楓の様子、変じゃないかしら? なんというか、楓の体が楓じゃない何かに乗っ取られているみたいな…」
たしかに、そんな気がする。あの言い回し、楓ちゃんらしくない。
それでは、誰か?
聞き覚えのあるような、ないような…?
少しすると、楓ちゃんの目が完全に開いた。
睦が楓ちゃんを見て、言う。
「楓? 大丈夫?」
すると、楓ちゃんが
「かえで? ああ、わらわか。大丈夫じゃ…。もう、大丈夫じゃ」
と言う。ハッキリした声で。明らかに楓ちゃんとは異なる人物の言い回しで。
睦が楓ちゃんを睨む。
「アンタ…、誰?」
そういうと、楓ちゃんは首をかしげて、目を細め…
「お主がなかなか、この者に石を渡さなかったせいで、同調に時間がかかってしまったではないか。
まぁ良い。こうして、結果的には同調できたことであるし…」
という。そんなもったいぶった返事にしびれをきらした睦が叫ぶ。
「アンタ…、何者!?」
そういうと、楓ちゃん…に憑依した人物はこう言う。
「わからぬか? わらわは "おるる" じゃ」
「「えーーーーーっ!!?」」
-つづく-
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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
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