Written in Japanese(UTF-8)
2021.1.12
Ayacy's HP
2021.1.12
Ayacy's HP
/葦葉製作所/トップ/小説目次
神緒のべるず 第10話 迷子の迷子の睦さん -1-
前へ / 目次へ
睦は迷っていた。
人生に迷っているとか、政治的判断に迷っていたとかではなく、単純に道に迷っていた。
もちろん、普段はそんなことはなくて、道には強い方だけど、今日は格別、迷っていた。
「だから、ボクを解き放てば、そんな迷いなんて、なくなるんですよ~」
どこか明るい、挑発するような声が、背後に背負う壺から聞こえてくるが、そんな言葉に易々と乗ることはできない。
睦は、壺を、わざと上下に激しく揺すりながら
「アンタはちょっと、黙っていなさいよ!」
と一喝して、再び歩き出した。
こんなことになった原因は、やはり睦の請け負った妖怪退治にあった。
睦は明日香からこんな相談を受けた。
「光大朗さんが引き受けてきた相談で、どうも不思議な案件があってね。ちょっと手伝って欲しいのだけど・・・」
探偵業という名の便利屋を営む光大朗は、なんでもかんでも相談を引き受けてしまうのが困ったところである。今回は「ある博物館の中で迷子になる子供が多いので調べて欲しい」という、なんとも探偵らしくない相談の解決を引き受けてしまったのだそうだ。
調べていく中で、迷子になった子供の多くは、その原因を「妖怪のせい」だと証言しているのだという。
迷子になった状況にも不可解な点が多く、これはいわゆる妖怪的案件と考えられるので、私に手伝って欲しい、というわけだ。
「何でも妖怪のせいにすればいいってもんでも、ないと思うんだけどねぇ」
最初はそう思ったが、博物館に着いてみると、ピーン!と来た。
「ああ、これは妖怪の仕業ね」
軽く一暴れして原因となっている妖怪を退治…しようとしたわけなんだけど、その妖怪がどうしても自分を殺さないで欲しいと懇願するものだから、博物館にあった壺を一つもらって、その中に封印するということにして、持って帰ってきたというわけだ。
(壺の代金は光大朗が保証するって言ってきちゃったけど…、ま、いいか!)
そして、その帰り道、事件が発生した。
次へ / 目次へ
※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
関連サイト: