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2021.1.12
Ayacy's HP
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神緒のべるず 第13話 スワップ・イン -1-
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先週、睦(むつみ)に寝込まされてから一週間が経過し、今日は巫女コスプレイベントの日。
ちょっと早めに目が覚めてしまった私は、睦から借りた巫女服に袖を通して鏡の前でくるくる回っていた。
トントン、とドアをノックする音が聞こえ、「いいわよ」と声をかけると、妹の里桜が顔を覗かせる。
「姉さん、なんだかご機嫌みたいだね」
「ふふふ、そりゃそうよ」
「先週はドタキャンだったからね。それにしても、出発までまだまだ時間があるというのにもう着替えちゃって。歩きづらくない?」
「ううん、そんなことないわ。もう慣れたし」
そういうと、私は里桜の前でくるくる回ってみせる。
「大丈夫そうね」
里桜はウンウンと頷き、「あっ、そういえば」と言って
「で、姉さん、朝ご飯の準備ができたから、早く来てね」
私は「りょうかーい」と返すと、巫女服のまま部屋を出た。
事務所の入り口を通りかかったところで、ドンドンドンドンと、すごい勢いでドアを叩く音が聞こえる。
「こんな時間になんだろう?」と思いつつ、ドアを開けてみると、そこには小学生くらいの小さな男の子が立っていた。
息を切らし、ただ事ではなさそうな顔をしているので、私が「どうしたの?」と尋ねると、
「お、追われているんですっ! かくまって!」
なんてとんでもないことを言っている。事情は聞きたいが、聞いているヒマはなさそうだ。
私はひとまず「こっちへ」と台所まで案内し、そこにいた里桜に「この子を隠してて」とだけ伝えると、事務所の入り口まで戻る。
すると、ドタドタという激しい足音がして、ドアがガンガン叩かれた。
私は、『朝起きたばかりで不機嫌そうな顔』を作ってからドアを開けると、外には強面な男2人が立っていた。
やせ形でガラの悪そうな男と、ちょっと太っていてサングラスをかけている背の低い男の2人。
ヤクザかなんかか? そう思っていると、サングラスの男が「おい、ねえちゃん」とドスの聞いた声で話しかけてきた。
「これくらいの、男の子が、ここに尋ねてこなかったかい?」
私は、不機嫌顔を崩さず「さぁ、来ていませんけど。」と不機嫌そうな声で返した。
すると、やせ形の男の方が
「そんなはずはねえんですけどね? だってオレたち、この中に入っていくの、見ちゃったんだし」
と言いながら、足をドアの内側にめり込ませてきた。
ちょっと頭に来た。
「チッ、三流ヤクザが…」私はつぶやくと、その足を思いっきり踏んづけてやる。
やせ形の男はあわてて足をひっこめる。私は不機嫌声をさらに不機嫌そうにして
「だからさぁ、知らないって言ってるでしょ? なんかの見間違えでしょ?」
そう言ってやったが、男2人はなおもこちらを睨み続けており、引いてくれる様子はない。
どうしてやろうか…やっぱり、体でわからせるしかないのかなぁと思っていたら、ふと良いことを思いついた。
この服装をネタに脅してやろう。
私は懐より白いヒラヒラした紙の付いた木の棒(名前はよくわからないけど…)を取り出して、やせ形の男に話しかける。
「ところであなた、今日は肩が重いなとか思ってないかしら?」
男はビクッとする。意外にも効果てきめんなのかしら?
さらに追い打ちをかけるように、
「なんか憑いているみたいね。この場所にいると…そう、この場所は霊的にゴニョゴニョだから、早くこの場所を去らないとさらにゴニョゴニョ…」
語尾を濁らせ気味に脅してやると、やせ形の男は「ヒーッ」と言いながら走り去っていった。
サングラスの男も「お、覚えてやがれっ!」と言い残すと、そのまま走り去っていった。
こんなに効果があるとは思わなかったな。あの人達、過去に何か怖い目にでもあったことがあるのかしら?
そう思いながらドアを閉めようとすると、奥からさっきの男の子が出てきて
「お姉さん、ありがとう!」
と言いながら走ってきた。怖かったんだろうな。
私はしゃがんで、男の子の頭にポンと手を乗せると、
「よくがんばったわね」
と声をかける。そして、ゆっくり事情を聞いてみることにする。
「それで、あなた、お名前は? どうして怖い人たちに追われていたのか、教えてくれるかな?」
そう聞いてみると、男の子は急に私の手を握り、
「お姉さん、悪い霊の見える巫女さんなんでしょ? ちょうど良かった! ちょっと来て欲しいところがあるんだ!」
と言うと、いきなり私の手を握ったままドアの外に走り出した。
「いや、その、さっきのは…っていうか、そうじゃなくて…」
これはただのコスプレなんだけど…と伝えようとするが…あまりにも急いで手を引っ張られているもんで、言い出せなかった…。
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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
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