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2021.1.12
Ayacy's HP
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神緒のべるず 第8話 おるる☆すくらんぶる -2-
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「……それで、ココが現代を象徴するお店ってワケね…。私、着替えてくればよかったわ…」
私はうなだれる。
睦が「現代の象徴」と言って、おるるを連れてきたのは、なんと「メイドカフェ」。私は普通にメイド服を着ているんだから、店員さんに間違われちゃうじゃない!
「まあまあ。ここの制服は、明日香の着ている服とは違うんだし、さすがにそこは大丈夫でしょう。
それよりも、ホラ、あれ」
そういって睦が指さす方向には、おるるを取り囲む、メイド服を着た店員さんたち。
「まあ、かわいいお嬢様!」
「お嬢様、いつもかわいくいらっしゃいますね」
かわいらしい小学生がメイドカフェに来たのが珍しいのだろうか。店に入るやいなや、取り囲まれて騒がれている。
そして質問攻め。困惑するおるる。
「な、なんじゃ…?『お嬢様』とは、どういうことじゃ…?」
と戸惑い、誰ともなしにブツブツと独り言を言っている。
その後、しばらくすると、店員さん達は職業意識を取り戻し、落ち着いた雰囲気に戻った。
店員さん達のカワイイカワイイ攻撃から抜け出したおるるは、疲れ気味表情を浮かべながら椅子に座る。
それを見ていた睦が、笑いながら話しかける。
「あらら、災難だったわね。どう? 現代は?」
それを聞いたおるるは、ため息混じりに、
「なんだか疲れるのぉ。それで、ここは何をする店なのじゃ?」
と聞いてきた。すると睦は、
「さっきみたいなサービスを除けば、周りを見ればわかるとおり、普通の喫茶店よ。」
と周囲を見回しながら答えた。
「喫茶店?」
聞き慣れない言葉に、おるるが戸惑う。それを聞いた睦は「そうか…」とつぶやき、
「そう、お茶とかケーキとかを出してくれるお店よ。お茶って言っても、日本茶じゃなくて西洋のお茶ね。それから、ケーキは、まあ、お菓子かな。」
と解説を加える。するとおるるは、
「ふむ。それでは、何か頼んでみようかのう」
と、今日のお勧めメニューを頼んだ。
「あ、あああ、甘すぎじゃぞ! ケーキという食べ物は!」
店から出た後も、慣れない甘さに、おるるは苦しみの感想を叫んでいた。
「しかも、茶まで甘いとはどういうことじゃ!」
出された紅茶に、睦が面白がって大量の砂糖を入れてしまったのだ。口直しに…と飲んだ紅茶が激甘になっていて、もうイヤってほど甘さを味わったわけだ。
「まあ、現代は色々と豊かになっている、ってことね」
睦がそんなことを言っている。ああ、こりゃ、元の時代へ帰れと嫌がらせをしているんだな。
そうこう言っているうちに、私たちは電気店の建ち並ぶ場所へ歩いて来ていた。
電気店には大型テレビが陳列されていて、そこには現在放送中の番組が流されている。
おるるはそちらに興味を持ったようだ。
「それにしても、これまた奇妙な箱じゃのう。これは何じゃ?」
それを聞いた巴が「テレビ」というものについて説明をする。それを聞いたおるるは、
「なるほど。エレキテルの技術はここまで進歩しておるのか」
と感嘆していた。
…と、そこでテレビはニュースを映し出した。店員がチャンネルを変えたのだろうか。
どうやら、都内某所でヤクザ同士の抗争があったらしい。付近の飲食店の窓ガラスが割れたとか、柱に銃弾がめり込んでいたとか、そんな話題がテレビから流れて来ていた。
それを見たおるるは、
「ふうむ、現代でも、悪の種は尽きないようじゃのう。ここは、わらわが一枚脱ぐしかないか…」
と、いきなり走り出してしまった。
あまりの軽快な走りっぷりに、私たちはしばらく、その様子を呆然と見ていたのだが、睦がふと我に返り、後を追いかける。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。どこへ行く気よ!」
私たちも我に返り、後を追いかけた。
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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
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