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2021.1.12
Ayacy's HP
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神緒のべるず 番外編その3 疑似スクリーンセーバー3D -3-
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「何者っ!」
私は後ろを見ずに聞く。
怪しげな鳴き声の主は何も応えない。
そのまま待つこと、30秒…いや、1分くらいは待っただろうか。
らちがあかないと思った私は、後ろに強烈な殺気を飛ばしてやることにする。
(黙ってるとシャミセンにしちゃうぞ………)
しばらくすると、ようやく声の主から応答が来た。
「ニャーって言ったんだから、そこは『なんだ。ネコか』って言うべきニャ」
「残念ながら、ネコは日本語をしゃべらないの。知らなかった?」
「それは知らなかったニャ。お嬢ちゃん、博識ニャ」
「べらべらしゃべってると、その舌引っこ抜くわよ、猫又め。あまりうるさくしゃべると猫又の股裂きをお見舞いするよ」
「うにゃにゃにゃ。それは勘弁ニャ。っていうか、オイラには『タマ』っていうラブリーでキュートな名前があるんニャよ。それを忘れないでほしいニャ」
「うるさいわ。あんたに関わるとロクなことがないんだから。ほら、シッシッ! あっちに行きなさい」
「まぁ、そんなこといわずに……ニャ」
タマは、そんなことを言いながら、私の肩に乗っかってきた。
このネコ……、というか、妖怪猫又は「タマ」という名である。現在は、その名前を「与えた」2番目の姉である巴姉さんが使役する使い魔という立場である。
というか元々、巴姉さんはこの猫又に取り憑かれたわけだったのだが、逆に使役する立場に逆転したわけだ。実際、巴姉さんの言うことだったらなんだって聞くみたいだし。
ちなみに、睦姉さんの言うことも、比較的よく聞く。それは、睦姉さんが「暴力的」にタマに接する出すためだ。これについては、巴姉さんも庇ってやれない。巴姉さんも、睦姉さんが怖いということか。まあ猫又にしてみれば、自らの立場を安泰にするために、しぶしぶ言うことを聞いてやっている、ってところかもしれない。
というわけで、対等に話せる人間は、私一人というわけで。こうして、馴れ馴れしく話しかけてくるわけだコノ猫又が。
「オイラのソリューションも聞いて欲しいニャ……」
「じゃ、お休み…」
猫又なんぞの声に耳を傾けたらロクなことがおきないことは、すでに経験済み。
私はタマの声を無視して、PCの電源を消そうとする。
「うにゃー。オイラ悲しいニャー。このままオイラの意見を聞いてくれる人も居なくて悲しく死んでいくニャー」
「あんたはは私よりも長生きするわよ」
「猫又は寂しいと死んじゃうニャー」
「ウサギかっ!」
こんな感じで気軽にトークできるのも、私相手だからと言うことか。
「で。どんなソリューションを提供してくれるのかしら? 普通の方法で3Dが見られないことなら、すでに調査済みよ」
「そこは! オイラ達の特技を十分生かせるソリューションを提供するニャ。ちょっと耳を貸して欲しいニャ」
「え? どれどれ?」
「それはゴニョゴニョ」
「って、ヒゲがくすぐったい! 肝心の話を聞くことに集中できないわ! っていうか、この部屋には2人しか居ないんだし、別にコソコソ話す必要ないじゃない!」
「おお、それもそうニャ。オイラ、壁に耳あり障子に目ありっていうから、セキュリティに細心の注意を払ったまでニャ。でも、周りに怪しい人はいなさそうニャ。で、オイラの提案としては、もっと妖怪パワーを活用するニャ。妖怪とコンピューターは、そもそも相性が良いはずニャ」
後々考えてみれば、このときに潔くお断りをしておけばよかったんだ。
だって、こいつに関わるとロクなことがないってことは、最初から知っていたんだから。
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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
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