Written in Japanese(UTF-8)
2021.1.12
Ayacy's HP
2021.1.12
Ayacy's HP
/葦葉製作所/トップ/小説目次
神緒のべるず 第9話 遊園地大戦 -5-
前へ / 目次へ
巴が楓に聞く。
「楓。火の効かない相手には、どんな攻撃が有効かしら?」
すると楓ちゃんが、人差し指をあごにあてながら答える。
「えーっと。水かな」
巴がニッコリ「正解!」という。「RPGの基本ね」
「問題は、どうやって、ここにあのスライムを倒すだけの水を持ってくるか、なんだけど…。今日はこんなに晴れてて、雨には期待できなそうだし…。
姉さんの持ってきた『ソイツ』に聞いてみてもいいかしら?」
巴が睦の方をみてそんなことを言うと、睦が「コイツ?」と言いながら、懐から何かを取り出した。
何枚もの赤い札が貼りつけられた、赤い石のついた首飾り。「おるる」さんとの通信機だ。
こんなところにまで持ってきていたのか…。
睦が、赤い石に尋ねる。
「さて、時間がないわ。状況はわかっているでしょ。どうしたらいいかしら?」
赤い石は少し光ると、
「うーむ、そうじゃな。雨乞いの儀式でもしたらどうじゃ?」
と言い出した。
「雨乞い?」と睦が問いただすと。
「そうじゃ。雨を降らせるための儀式じゃ。本当は、墨と筆を使って、『式』を大地に刻んで儀式を行うのじゃが…今は材料もないし、時間もかかる。ただし、5人もいれば、舞(まい)で代用できるじゃろう。手順を伝える」
そういうと、雨乞いのダンスの方法を伝えられた。
…。
………。
……………。
…恥ずかしすぎる…。
1分経って作戦タイム終了後、私たちは観客の前で、盆踊りにリンボーダンスと北米原住民のダンスを混ぜたような変なダンスを披露することになった。睦と楓ちゃんと里桜は、ノリノリで。巴は義務感から無表情で、私はひたすら恥ずかしがりながら。
西園寺さんとスライムは、唖然とその様子を見ていただけだったのだが、雲行きが怪しくなり、雷が鳴り出すと、急に焦り出す。
「まっ、まさかっ!」
一気に雨が降り出し、観客が慌てて屋根のある場所に逃げ出す。西園寺さんはスライムへ退却を命じるが、雨を浴びたスライムは動けなくなっており、そのまま溶けてしまった。
西園寺さんは「キーッ! またしてもっ! おぼえてらっしゃいっ!」と言い、退却していった。
というわけで、無事にヒーローショー(ヒロインショー?)は、幕を閉じた。
「いやぁ、途中、アクシデントはありましたけど、皆さんのおかげで助かりましたよ」
会場のスタッフからお礼の言葉をもらった。
「よろしかったら、皆さんでどうぞ」
6人分の、遊園地の年間無料チケットだった。
睦がそれをもらって喜ぶ。
「やったわね! 楓! これで何度でもジェットコースターに乗れるわよ!」
「いっ、いやぁぁぁぁぁ〜!」
楓ちゃんの叫び声が、控え室にこだまするのだった。
-おしまい-
次へ / 目次へ
※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
関連サイト: