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2021.1.12
Ayacy's HP
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神緒のべるず 第8話 おるる☆すくらんぶる -4-
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工場の柱に、楓ちゃんがヒモで縛り付けられている。
ガラの悪そうな男が一人、楓ちゃんに近づいて、怒鳴りつけている。
「おぅおぅおぅ、素直に吐けやゴルァァァァ! テメェどこの組のモンじゃ!」
「だっ、だっ、だから! 5年2組だってばぁぁぁぁ!」
楓ちゃんが泣きながら、的外れの答えを叫んでいる。
っていうか、明らかに小学生の少女に「どこの組のモンじゃ」は無いだろうに…。
まあ、廃工場の外に倒れていた男達の人数を考えれば、普通の小学生とは思えないか。
そこに、サングラスの男が現れて言う。
「まあ、子どもにそんな怒り方をしなくても良いでしょう。もっと、やさしくしなきゃ…」
というと、サングラスの男は、楓ちゃんの首筋に舌をツツツっと這わせる。
「ヒーーーッ」
と、楓ちゃんが悲鳴を上げる。ガラの悪そうな男は、それを見て、ニヤニヤしながら
「おっ! アニキはちっちゃい女の子が大好きだからなぁ。このまま何も言わないと、色んな意味で食われちまうぞ!」
と言っている。
それを見ていた睦は、あわてて飛び出そうとする。
それを、赤い石が光り、制止をかける。
「まあ、待て! そんなに慌てることも無かろうに。少しは作戦を練ってからのほうが良かろう」
「で、でもっ!」
睦は慌てるが、赤い石は落ち着いた声で語りかける。
「わらわに良い案がある。そちども、ちょっと耳を貸せ」
睦はその提案を聞いて、ニヤっと笑う。
「まあ、非常事態にどうかと思うけど…面白そうな作戦ね。巴も、それで良いでしょう」
すると巴は、
「姉さんがそう言うなら…」
と応える。睦はなんだかノリノリのようだ。巴も、しぶしぶした態度を見せつつも賛同しているわけで、実は内心ノリノリなのかもしれない。
そして睦は、私に、
「そこで、メイド遠投選手権優秀記録保持者の明日香選手にお願いよ」
と、目をギラギラ輝かせながら言ってきた。私は、
「そんな選手権ないでしょ!」
とツッコミを入れるが、そんなものは無視されて、赤い石の付いた首飾りを渡される。
「この首飾りを、楓の首に掛かるように投げてね」
とお願いされる。
「りょーかい」
遠投は苦手じゃないしね。
私が、この首飾りを投げるのが合図だ。睦と巴が、それぞれ、事前に決めた位置にスタンバイしている。
3人がアイコンタクトを取り、準備完了を伝え合うと、私は首飾りを、楓ちゃんの首めがけて放り投げた。
——————。
細かい落下位置の調整は、首飾り自身が制御するとのことだったので、私がやったのは、首飾りを楓ちゃんの近くまで投げてやることだけだった。
首飾りが楓ちゃんの首に掛かる。
赤い石が、強烈に光り出す。
近くにいた男たちが、ひるんで一斉に退く。
そこへ、両脇でスタンバイしていた睦と巴が走り寄り、楓ちゃんを縛っていたヒモを切り落とす。
光が止み、強烈な光に面食らっていた男達が状況を認識し、睦・巴・おるるの3人を取り囲む。
男達の中のリーダー格が、叫ぶ。
「おっ、お前ら! 何モンだ!」
すると、わざとらしい間を置いてから、睦がつぶやく。
「私たち—————? 私たちは—————!」
3人が決めポーズを取ると、一斉に叫ぶ!
「みこみこ戦隊! シュラインジャー!」
シャキーン!
決まった−!
あとは、3人が普通に、それぞれの実力を発揮して、周りの男たちをバッタバッタと倒していった。
ってか、普通にやればいいだけなのに…。
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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
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