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2021.1.12
Ayacy's HP
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神緒のべるず 第5話 航時見聞録 -5-
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私と睦は、おるると最初に出会った道場へ戻った。
道場へ戻る途中に聞いた話では、私たちがこの時代に来ようが来まいが、元々、あの屋敷には踏み込む予定だったのだという。なので、明日香がどんなに暴れても構わなかったというわけだ。
「どうじゃ? 江戸時代の町はどうであった?」
笑いながらのおるるにそう聞かれ、私は疲れた表情で答える。
「なんていうか。疲れたわ…」
「私も。ここでじっとしていればよかったわ」
睦も疲れた表情で答える。
「そうかそうか、満喫できたようで何よりじゃ」
そういうと、おるるは奥の部屋から修理済みの武具を持ってきた。
「ほれ。なおったぞ。250年も経ってから無理に使うものだから、だいぶ中がひどいことになっておったぞ。
とりあえず制限時間を越えて使わないこと。それを守って使うことじゃ」
「す、すみません」
睦が謝る。私たちの時代の時間で言うところの「3分制限」ってのがあったってことは聞いていたけど、最近はそれを無視して使うことが多かったようで。
「ところで、実はこれの修理はすぐに終わったんじゃがな。
おぬしらがなかなか帰ってこなかったから、こんなものを作ってみたんじゃ」
そういうと、おるるは赤い玉のついた首飾りを取り出す。
「これを、わらわと似ているという者の首に掛けてやってほしい。
それを以て、今回の修理代ということにしてやろうぞ」
睦はそれを受け取ると、軽く会釈する。
「それじゃあ、私たちは帰りましょうか」
私がそういうと、おるるが黄色い札を睦に渡す。
「たっしゃでな」
「ええ、色々ありがとう。」
おるるがその場から離れる。
私が睦に寄り添い、睦が呪文を唱える。
周囲が光に包まる。
光が収まると、私たちは元の神社の境内にいた。
時間は…午前中のようだ。つまり、私たちがタイムスリップする直後の時間に戻っている。
「それじゃあ、一休みしようかね」
と睦が言った。
あっちではもう夜だったのに、こっちでは午前中だ。
時差ボケと呼んで良いのかどうかはわからないけど、とにかく眠い。
「それじゃあ、また今度ね〜」
私はあくびをしながら事務所に帰る。
睦もそのまま母屋に帰っていった。
…楓ちゃんに首飾りを渡すことなんかすっかり忘れて…。
-おしまい-
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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
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