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2021.1.12
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神緒のべるず 第15話 黒猫の恩返し -1-



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暑い…いや、熱い……。
どうしてこんなに暑いんだろう。夏だから暑いのか? いや、むしろ暑いから夏なのか?
あまりの熱さに、あたしの頭は熱暴走状態となっていた。

———ここはどこ? 高校の教室。
———今はいつ? 夏真っ盛り。で、6時間目。歴史の授業中。
———あたしは誰? 神緒 巴(ともえ)。家は神社。姉は睦(むつみ)で妹は楓(かえで)。

よしっ。正常。

しかし。あれだ。
都内にある学校のほとんどには、すでにクーラーが導入されているのだという。
だというのに、なぜ、この高校にはクーラーが導入されていないのか。

この学校には、熱さを活動源とする妖怪かなんかが生徒として潜り込んでいて、各教室にクーラーが導入されないよう、校長や教育委員会の人たちの思考をコントロールしているんじゃないか。
ああ、イカンイカン。また暴走じみた思考をしてしまった。

だいたい、この制服というのも暑いのだ。いちおう夏服なので、上着は着ておらず、白のワイシャツは半袖という姿なのだが、なぜネクタイをしなければならないのか? 熱い空気が逃げていけないではないか。
そして、紺色のスカートというのは、どうしてこんなに暑いのか? そして、蒸すのか? 濃い色というのは熱を吸収しやすいというのは、制服選定者は知らないのか?

女子なら誰しも、スカートの中を、うちわか扇でばたばたーっと仰ぎたい衝動に駆られるだろう。しかし、今は授業中。教室には男子も居る、そんなことができるわけがない。そして教壇に立つのも男性教師。できるわけがない。

先生のしゃべりかたが、どことなく熱いのも、原因かもしれない。
先生が言うには、この国の歴史は戦前までが熱いのだという。男のロマンがあるのだという。戦後の歴史は、連合国の言いなりになってきたから、全然熱くないのだという。だから、戦前までを熱く語っているのだという。なんだ、妖怪は、この人じゃないか。

………。
……。
…。

おっと、イカン。また暴走した思考をしてしまった。
首をふるふるっと振って、余計な思考を頭から追い出す。

…と、そこで教室の窓の外———校庭の隅っこ———木の陰になっているところに、一人の女の子が膝を抱えて座っているのが一瞬見えた。

なんだろう。

なんとなく気になったので、校庭の方を見てみることにした。
校庭では、体育の授業が行われている。おそらく、あの子は体調が悪いかなにかで見学をしているということなのだろうか。なんとなく、そう見えるし。

この炎天下、屋外の授業は辛かろう。それは木の陰で休んでいる者と言えど、例外ではあるまい。実際、ひたすら熱そうにしているようだ。

それを見ていると、あたしの方も熱くなってきた。額からにじみ出た汗が、頬を伝って、あごの方に溜まってきている。
ああっ!気持ち悪い!

手で汗をぬぐうと、今度は額の汗が目に入ってきた。
うわっ!しみるっ!

思わず目をつぶる。

……そこで、ちょっと気になる光景が見えた。あたしの網膜に残っている光景。あの、木の陰で休んでいる女の子の頭に、ネコの耳っぽいものが付いている?
ちょうど、ネコ耳をコスプレっぽく付けているような感じで。
そりゃ、そんなものを付けていたら、しかも屋外で座っていたならば、暑いだろうに。

あたしは同情しながら、目を開ける。
するとどうだろう。女の子の頭のネコ耳は無くなっていた。さすがに暑くて取り外したということか。

そりゃそうよね。ネコ耳付けて熱くなったら、気分もおかしくなって体育の授業を休みたくもなるわね。
ふむふむ、と一人納得していると、隣の席の生徒が、ツンツンと、肘を突っついてくる。

何?と思って、その生徒のほうを向くと、「前っ、前っ!」と言いながら、教壇のある方向を指さしている。
そして前を見ると……先生がこちらを睨んでいた。

あっ、ヤバっ。窓の外を見すぎていたか…。
あたしは先生に軽く会釈すると、先生は「しかたないな」という顔つきで、そのまま授業を続行した。

ああっ。まったく、今日は暑さで、あたしの頭はどうかしてるっ!!

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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。


関連サイト: 巫女ブラスター2 巫女ブラスター

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