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2021.1.12
Ayacy's HP
2021.1.12
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神緒のべるず 番外編その3 疑似スクリーンセーバー3D -5-
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翌朝。
すこやかに寝ている私に、突如殺気が襲いかかる。
突然の恐怖を感じて体を起こすと、
ドーン!
不可解な音と共に、私の枕元に、睦姉さんの足が踏み落とされていた!
…ってことは、姉の殺気に気づかず寝続けていたとしたら、私の顔は踏みつけられていた!?
「おはよう。楓。気分はいかがかしら」
「……、お、お、おはよう。睦お姉ちゃん。なんか朝から元気みたいだね……。」
「そうなのよ。もう、元気すぎてね。どうしようかと思って、アンタの顔を踏みつけようと思ったわけよ」
睦姉さんの顔には青筋が浮かんでいます。
青筋…。
「さっきね。プロバイダとかいう人から電話がかかってきたの。よくわかんないけど、ホームページエリアにウイルスがアップロードされていて問題なので、ホームページを閉鎖しました、ってさ。アンタ、なにやってくれちゃってんのよ!?」
は!? ウイルス?
ま、まさか……、なぁ。
「それだけだったらよかったのよ。閉鎖する前にホームページを見たって人から、パソコンの画面から黒猫のちっちゃいヤツがワラワラあふれ出てくるんだけど どうなっているのかと問合せが来たのよ。しかも、何件も。どういうことよ!? これ!?」
黒猫…。ヤツだ!
私は慌てて部屋を飛び出して、すみやかに本件の下手人を捜す。
いたいた。巴姉さんの部屋のドアをガリガリやってる。
私が近づいたことに気づくと、よりいっそう激しくガリガリやっていたが、ドアは開かず。
私がタマの首根っこを掴んで、ヒョイとつまみ上げる。
「ちょっと一緒に来てもらいましょうね!」
「な! なんのことニャ! えん罪ニャ! 猫権侵害ニャ! 訴えるニャ!」
「それは昨日聞いたわ。とりあえず出頭してちょうだい」
「コイツが犯人です」
私は、タマを睦姉さんの前に差し出す。
睦姉さんは、タマの首の後ろをヒョイと持って持ち上げると、タマの顔をジロジロみる。
「にゃ、にゃあっ!?」
タマが汗をかきながら、今世紀最大の笑顔をアピールするが…
「失格」
そういうと、睦姉さんはタマを窓から放り投げた。
「ギャー!」
ずいぶん遠くまで飛んだようだ。直後、トラックの通りかかる音がした。
「と、友達を放り投げるなんてどうかしてるニャー!」
声がドップラー効果と共に遠ざかっていく。
あぁ、トラックの上に乗ってで運ばれてしまったのね…。友達になったつもりは1秒もないけど、良いやつだったわ…。
そんな感慨に耽っていると、
「さて」
睦姉さんが、腕組みをした体制で私の方に向き直る。
「私は全幅の信頼を置いて、アンタにホームページ運営を任せてきたわけよ。それを。タマごとき妖怪に付け入れられるとは………、まだまだ修行が足りないようね…!」
「げっ!」
ま、またそのオチー!?
「復活だニャー!」
タマがトラックから帰還する。睦姉さんが、すかさずタマの首根っこを掴む。
「アンタもよ。一緒に来なさい」
パソコンの前に連れて行かれる。
「ここに、緑色の札が一枚、あるわ。修行の一環よ。アンタたちがネット上にばらまいた妖怪を、全部退治してきなさい」
「「えーーーっ!」」
私とタマの声が重なってこだまするのだった…。
-おしまい-
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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
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