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2021.1.12
Ayacy's HP
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神緒のべるず 第11話 シンデレラ・ドリーム -4-
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あの日、王子様が見惚れた女性を探すために、国中で兵隊達が人捜しをしていました。
どうやら、あのガラスの靴と同じサイズの足を持つ女性を探しているようです。
「お美しい」とか言っていたくせに、顔は覚えてくれなかったのね…。
兵隊たちは、私たち姉妹の住む家にもやってきました。
まず、巴ねえさんがガラスの靴にチャレンジします。
「ど、どうでしょう…?」
巴ねえさんが、おそるおそる、足をガラスの靴に入れてみますが…
ぶがぶかで合いません。
そりゃ、入るわけないでしょうね。
続いて、楓ねえさんが足を靴に入れてみました。
楓ねえさんは体が小さく、巴ねえさんよりも足が小さいので、ぴったり合うわけがないでしょう。
ところが…
「おっ! やったっ! 入ったーっ!」
そんな声が聞こえてきます?
そんなバカな、と思って見てみると、なんと、楓ねえさんの足にガラスの靴がピッタリはまっているではありませんか。
「ほらほらぁ〜。入ったよぉ〜。見て見て、おねえちゃん、ほらほら、えへへぇ!」
楓ねえさんは、私に見せびらかします。なんだかうれしそうです。
思わず私は、
「って、そんなハズないでしょうが! 巴ねえさんよりも足の小さい楓ねえさんが、…」
そこまで言うと、楓ねえさんは、「だって、入っちゃったんだから仕方ないじゃない」と言いました。自信たっぷりに。
私も負けていられません。
「っていうか、それ以前に、靴に足が入ったからって、その靴の持ち主である証拠にはならないでしょう?」
そういうと、今度は巴ねえさんが「ノンノンノン」と割って入ります。
「この世界は、人と靴が選択公理で右逆写像だから、それでいいのよ」
「って、なにワケのわかんないこと言ってんのよ! ごまかそうったって、そうはいかないわよ!」
私は叫びます。
でも、なんだろう? 何かひっかかることがあったような…。
世界?
いや、それよりも、もっと前…。
『見て見て、おねえちゃん、ほらほら』
おねえちゃん?
楓ねえさんが、私のことを、おねえちゃん…って?
「あっ!」
楓ねえさんが、何かに気付いたように口を手にあてます。
巴ねえさんはそれを見ると、「しーらない」と言いながら、部屋から出て行ってしまいました。
周りを見回すと、さっきまで居たはずの兵士は居ないし、ガラスの靴も見あたりません。
私は楓に近づいていきます。
「ねぇ、神緒さんちの楓さん、なんだか、楽しそうじゃない」
楓の顔には、冷や汗がスゴイ勢いで流れています。
「そ、それはさぁ。おねえちゃんが、寂しいかなぁと思って、こうして…」
そこまで聞くと、私は愛用のマシンガンを取り出します。そして、周囲の空間、何もないけれど、何かを投影しているように見えるあたりに、スゴイ勢いでマシンガンをぶっ放します。
ガラスの割れるような音が聞こえた後、周囲の色が消え、次第にあたりが真っ暗になりました。
とりあえず、私は楓の顔を掴み、
「あ、アイアンクロぉぉぉぉ〜〜〜〜〜!!!!」
楓が叫んでいます。
ふと、目が覚めた。私は畳の上で寝ていたようだ。
私の額には、緑色の札が、まるでキョンシーを封じるみたいに貼られていて、更にその上には、おるるが憑依に使う赤い石が置かれていた。
赤い石が、コトンと横に落ちて、緑色の札がその役割を終えてぺらりとはがれ落ちる。
横には、頭を押さえてうずくまる楓がいて、その向こうには、あきれた顔で正座して、楓を見下ろしている巴がいる。
そして、頭がガンガン痛い。
「あっ、姉さん、起きたのね。お疲れさま」
巴はそういうと、ちょっと困った顔をして、
「姉さん。覚えてる? お酒を飲んで、明日香さんが掃除を依頼されていた屋敷に乗り込んで、そのままぶっ倒れてたらしいじゃない?」
と言った。全然覚えてない…。
「明日香さんから連絡があって、引き取りに来てくれって言われたから、あたしと楓が迎えに行って…
まぁ、楓が、おるるさんに触発されて、ちょっとイタズラしてたみたいだけど…」
それで、この緑の札と、赤い石か。
こんなこともできるとはね。あとで、明日香にイタズラしてやろう。
-おしまい-
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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
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