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2021.1.12
Ayacy's HP
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神緒のべるず 第11話 シンデレラ・ドリーム -3-
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私がお城までの一本道を歩いていると、目の前に大きな岩が落ちておりました。岩はとても大きく、完全に道をふさいでいます。
とはいえ、この道を通らなければお城にはたどり着けません。
「なんか、急に落石があったらしいわよ」
「撤去は明日の朝になるんだって」
「キャーッ!そしたら、お城に行けないじゃない!」
そんな会話が聞こえてきます。
すでにパーティーは始まっている時間。遠回りをしている余裕はありません。かといって、あきらめるのもイヤです。
私は少し考えました。
「あっ!そうか! さっきの妖精さんからもらったお札が使えるじゃない!」
そう言って、私は懐から、赤いお札を取り出します。
「みなさーん、岩から離れていてくださいねー!」
そう叫ぶと、赤いお札を岩に向かって投げつけました。
ドカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
大きな音が鳴り、目の前にある岩が爆発して吹っ飛びました。
岩の破片の多くは上方に吹っ飛んでコナゴナになって風に吹かれていったので、周囲の人々への被害はなかったようです。
私は岩の無くなった道をゆうゆうと歩いて行きました。
しばらく歩くと、お城の門にたどり着きました。お城の周囲は大きな塀で覆われており、お城の中に入るにはこの門を通るしかありません。
門番の人に通らせて欲しいとお願いすると、
「ダメだ!ダメだ! もうすでにパーティーは始まってしまっているんだ!
遅刻者は入れることはできん!」
と怒られてしまいました。残念です。
塀は高く、よじ登ることはとても難しいです。あきらめるしかないのでしょうか…?
ふと思いつきました。
「こんなものがあったんじゃない!」
私は門番から見えない位置まで移動すると、懐より緑の札を取り出し、壁に貼り付けました。
すると、どうでしょう。壁には、まるで「通り○けフープ」を使ったみたいに、人が通れる大きさの穴が空いたではありませんか!
「やったぁ! 妖精さん、ありがとう!」
私はその穴をくぐり、お城の中に入ることができました。
お城の中では、すでにパーティーが始まっていました。
ですが、王子様はまだお見えになっていないようです。
楓ねえさんと巴ねえさんもいましたが、こちらには気付きませんでした。
私の見違えた姿を見て、妹であることに気付かなかったのかもしれません。
しばらくすると、ラッパの音が鳴り響き、王子様が現れました。
さすが王子様、カッコイイです。ちょっと無精ひげが目立つけど…、そのワイルドさがカッコイイ!
音楽が鳴り始め、ダンスタイムとなりました。
王子様は少しの間、そばにいた何人かの女性と踊っていましたが、私の方を見ると、駆け寄ってきました。
「あっ…あなたはっ! 私と踊ってもらえませんか?」
「はっ…はいっ」
王子は踊りながら、私に小声でささやきます。
「あなたのような、お美しい人と出会えるとは! ぜひ、私と…」
そこまで言いかけたところで、お城のチャイムが鳴り響きます。
ごーーーーーん、ごーーーーーん、ごーーーーーん、ごーーーーーん…
12回! 0時のチャイムです!
そういえば、0時でもって、妖精さんの魔法の効果は消えてしまうのです!
私は王子様に一礼すると、そのまま後ろを向いて走り去りました。
後ろから「あっ、ちょっと待って…」と王子様の声が聞こえてきますが、振り返るわけにはいきません。
「んもうっ! イイところだったのにっ!」
私は悔しがりながら走ります。
…と、ふと思い出しました。黄色い札で時間を戻せばいいんだっ!
私は懐から黄色い札を取り出すと…
…黄色い札は、ボンッと音を立てて消えてしまいました。さっきまで巫女装束だった服も、元の服に戻りつつあります。
同時に、私のすぐ横に妖精さんが現れます。
「残念!気付くのが、ちょっと遅かったのぅ。我が魔術は0時で消えてしまうのじゃ」
「ったく! 肝心なところで役立たずなんだからっ!」
私は走りながら文句を言います。
私は走っていますが、妖精さんは飛んで私の横に付いてきています。
妖精さんは、面倒くさそうな表情をしながら、私に言いました。
「まあ、わかっておるとは思うが、この先の階段で、そのガラスの靴を落としていくのを忘れるでないぞ!」
「んなこた、わかっているわよ! って、この靴は消えないのね。なんで?」
「その靴は、わらわからの、ただの贈り物だからじゃ。魔術によるものでなければ、0時では消えはせん」
「なるほどね」
私は階段のところに靴を落とすと、そのままお家まで走って帰りました。
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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。
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