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2016.10.21
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神緒のべるず 第10話 迷子の迷子の睦さん -2-



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「あれ? おかしいわね。さっきもこの自販機を見た気がするんだけど…」

帰り道、まっすぐな道を歩いていると、そんな違和感を感じた。すぐに、そんなわけはないか…と思い直したが、その後、歩いても歩いてもまっすぐな道が続くだけだし、さっき見た「激安!! 80円均一!!」と書かれた自動販売機がまた現れるし、誰ともとすれ違うこともない。

ここまで歩いてきた疲れもあり、脳内の混乱を収めるのにだいぶ時間を要してしまったが、違和感は確信に変わった。あの強烈なインパクトのある「激安!! 80円均一!!」と書かれた自動販売機を見間違えるはずがない。売り切れになっている商品の位置もさっきと同じだったと思う。それ以前に、こんな真っ昼間に誰ともすれ違わないのは、やっぱりおかしい。これは「妖怪のせい」ね。

人を迷子にさせてしまう妖怪と言えば、コイツだ。背中に背負った、壺の中にいるやつ。
いちおう、背中にいるコイツに、相談してみることにする。

「ねえ、アンタ。まっすぐな道が続きすぎて迷子みたいになっているんだけど、なんか変なことやっていないわよね?」
「ボクは何もやっていないですよ。」
「そうよね。」

やっぱりそうよね。この状態で悪さなんか、するわけがないもの。と、そこで、他に心当たりがないか聞いてみようとしたところ、とんでもないことを言い出した。

「ボクは何もやっていないですけど、ボクはここにいるだけで人を迷子にしてしまうのです」
「な、なんですって!?」

コイツは自分の意思とは無関係に、人を迷子にさせてしまうのか…。これは困った。

「たぶん、ボクが背中に乗っているから、自然とあなたが迷子になってしまうのです。ボクがいなくなれば、迷子にならなくなると思うのです」
「ちょっと静かにしてて…!」

こんなとき、文明の利器に頼ることができれば良かったんだけど。明日香とか楓が持っている、ケータイのナビゲーション機能とかいうやつ。
ああいう、機械があれば、こういう妖怪の力なんか大したことなくなるんだけど…。

私は、機械にめっぽう弱いので、ケータイは持ち歩いていないのよ。
まさか、こんな形で被害が現れてくるとは。ケータイを持つように執拗に勧めていた明日香の笑う顔が思い浮かぶ。くそー、明日香!復讐してやる(逆恨み)

「だから、ボクを解き放てば、そんな迷いなんて、なくなるんですよ~」
「アンタはちょっと、黙っていなさいよ!」

考えながら歩いていると、壺の中の妖怪に物理的な揺さぶりでショックを与えたせいか、今までになかったものが現れたようだった。

「公衆電話か。」

今時、公衆電話なんて珍しい…なんてことを思いつつ、睦は自宅に電話を掛けてみることにした。
巴か楓に助力を依頼しようというわけだ。

「プルルルル、プルルルル・・・」
しかし、誰も出てくれなかった。

「うーん、こんな時に限って、誰も出ないなんてなぁ」

こんな時は、明日香にかけてみようかしら。元々は、あの子からもらった相談が原因でこんなことになっちゃったんだし、あの子に責任を取ってもらいましょう。

「プルルルル、プルルルル・・・、ガチャ」
「はい、宮本探偵事務所です」

あ。この声は、営業用の声色の明日香だ! よかった、助かった!

「あ、明日香? ちょうど良かった。私よ、睦よ」


事情を簡単に説明し、明日香に来てもらうことにした。
あの子の機械文明能力(?)なら、この妖怪の力をなんとかしてくれるはずよ。




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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。


関連サイト: 巫女ブラスター2 巫女ブラスター

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