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2012.6.17
Ayacy's HP


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神緒のべるず 第13話 スワップ・イン -2-



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「ここです」

そういって連れてこられたのは、近所の公園の隅っこ。古い井戸があって、ぽっかりと口を開けている。
来たことのない場所だ。

男の子が言うには、この井戸は封鎖されていたのだそうだ。上にはキツネの石像が置かれていて、何かを封印しているようだったそうなのだが、今朝早く、一人で野球の練習をしているときに、誤ってその像を壊してしまったのだという。

そして、キツネの像はそのまま井戸に落ちていき、井戸はぽっかりと口を開けているというわけだ。今にも何かが飛び出して来そうな感じだが、どうやら本当に何かが飛び出してくるらしい。

「それで、お姉さんにどうにかして欲しいんだ…! 一生のお願い!」

そういって手を合わせて来るんだけど……あいにくだがこの格好はコスプレでしかなくて、私にそんな力はないんだけどなぁ。
とりあえず、言いづらい雰囲気なんだけど、伝えねば…。

「あのね。私、こんな格好しているけど、これは…」

そこまで言うと、背後からドタドタという足音が聞こえてきた。

「おっ!いたいた!」「いたぞっ!」

やばっ!さっきの男たちだ。
私は男たちの方を振り返り、男の子を後ろに隠してやる。

「おうおうおう! さっきはよくもやってくれたじゃねえか!」

やせ男が怒鳴りながら歩いてくる。
ああ、ガンガンうるさいなぁ。
やっぱり、体でわからせるしかないのかなぁ…。私がそう思って前へ出ようとすると、後ろにいた男の子が私の前へ出てくる。

「ちょっと待った。みんな待って」

男の子が、私と男たちの間に入って来た。私が不思議に思っていると、やせ男が

「しかし、坊っちゃん…」

と言い出した。へ? ぼ、坊っちゃん?



「へ、へぇ〜……。会長さんの、お孫さん…?」

この男の子は、まぁ、その、強面の男達の……お勤め先?の……会長さんのお孫さんなのだそうだ。
この井戸については、男達の方が詳しかった。どうやら古い時代にこの井戸に悪霊かなんかを封じていたのだそうで、今朝見てみたら、悪霊を封じるためのキツネの像が無くなっており、近くで遊んでいたはずの男の子がいなくなっていたため、男の子の身を案じて大慌てで捜索していたのだそうだ。

で、男の子の方は、大切な井戸を壊してしまったことで怖くなって逃げ出し、追いかけてきた強面の男達に「怒られる」と勘違いして、私たちのいた事務所に逃げ込んだ、ということなのだそうだ。

で…。

「姐(あね)さん! あっしからも、ぜひお願いします。 悪霊のヤツを、どうにかしてくだせぇ!」

サングラスの男が私に土下座している。
そ、そんなこと言われても…私、困るんだけど…。

「お、オレに悪霊っぽいのが憑いているんでしょ? と、追い払って! 追い払ってよぉぉぉぉ!」

やせ男が私の手を握ってくる。キモイっ! 離せっ!

ああ、もう、これはコスプレでしたなんて、今さら言える雰囲気でもないし…。
とりあえず、やせ男の手をふりほどくと、お祓いをする風な感じのポーズを取ってみる。
ん〜。スキを見て、睦を連れてこよう。こういうの、専門だろうから。

白いヒラヒラした紙の付いた木の棒(名前はよくわからないけど…)を取り出して、構えて……。

「あっ! ちょっとノドが乾いたんで、ジュース買ってくるわ」

私はそういうと、その場を離れようとして…

「へい! 姐さん! 飲み物ならこちらに」

やせ男がジュースを渡してくれた。なんて準備が良いんだろう。無駄に。

「あ…、ありがとう……」余計なことを。

私はそう言い、ジュースを飲み干すと…、再び白いヒラヒラした紙の付いた木の棒を取り出して、構えて……。

「あっ! ツイッターに今の気分を書き込んでこよう。それじゃ…」

そういってその場を離れようとすると、サングラスの男が立ちはだかる。

「姐さん! いい加減にしてくだせぇ……」

男がキレ気味に話しかけてくる。あー、こりゃもう、抜け出せないなぁ…。
そう思っていると、男の子が急に叫びだした。

「お姉さん、井戸から黒いものが!」

サングラスの男が「今度こそお願いしますよ」と言い、その場を離れる。私が井戸の方を向くと、黒い煙のようなものが、ムクムクとわき上がって来るのが見えた。
だんだんと、何かの形になっていくように見える。あれは、ネズミの形かな…? モヤモヤ、チラチラしていてよく見えない。

ゴゴゴゴゴゴ……………
なんだか雲行きが怪しくなってきて、周囲の空気が、どんどんよどんでいく気がしてくる。霊感のない私でもわかる。こりゃヤバイよ…。


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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。


関連サイト: 巫女ブラスター2 巫女ブラスター

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