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2012.6.17
Ayacy's HP


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神緒のべるず 第12話 スワップ・アウト -3-



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周りを見回すと、皆もニーソックスが一着無くなっているとか、手袋が一つ無くなっているとか、リボンが一つ無くなっているとか、騒ぎ出している。
それぞれ、1人ずつ衣装の一部が無くなっているようだ。

「おかしいわね…」
皆、この部屋にいながらにして、ものが一つずつなくなっている。これで私が巫女服を着ていたなら「異変よ」とでも言っているところなんでしょうけど…。


「あ、あれ…」

無くしものを探してた女の子のうちの一人が、部屋のドアを指さして固まっている。
私がドアの方を見ると、さっき、主催者が出て行ったときに、きっちりとしまっていたはずのドアが、ちょっとだけ空いているように見える。

まるで誰かがそこから覗いているように…。
誰かが覗いている気配。

「誰っ!」

ドアのすぐ近くに座っていた私は、開きかけになっていたドアに向かって蹴りを食らわせる。
ドアはすばやく全開になったが…、そこには誰もいなかった。

気配は消えてしまった。
気のせいだったのかもしれないが、気味が悪いなぁ…。



その後、コスプレ撮影会は順調に行われた。
もしかしたら、撮影中にも何か事件が起きるかもしれないと考えたが、特に何かが紛失するなんてこともなく、いたって平和にイベントは進んでいった。

いちおう、里桜に聞いてみる。

「ねぇ、さっきの、どう思う?」
「さっきのって?」
「開きかけになっていたドアよ。向こう側に、誰かいたような感じがしなかった?」
「あー、あれね」

里桜はそういうと、ドアの所まで歩いて行き、ノブを回す。

「ちょっと来てみて」と里桜が私をドアの近くまで連れてきて、ノブを見させる。
するとどうだろう。ドアのノブが回された状態のまま、止まっている。

「これって…?」

私が里桜に尋ねると、

「そう、このドア、ちょっと古くなっているらしくて、回った状態のまま止まっていることがあるのね。
 だから、一見、ドアがちゃんと閉まったように見えても、ノブが元の位置に戻らなくて、風が吹くとドアが開いちゃうことがあるってわけね」
「なるほど」

たしかに。気配が気のせいだったとすれば、これで全て説明が付きそうだ。

「でも…」と里桜は心配そうに
「各自の持ち物が1つずつ、きっかり1つずつ無くなっている理由の説明にはならないね…」

紛失したものは未だに見つかっていない。買えばけっして安くはないエプロンが無くなってしまった里桜にとっては、それが一番の問題のようだ。



撮影は夕方頃に終了し、これから全員で食事に行こうという話になった。
もちろん、主催者のおごりで。

私はいつもの巫女服に着替えていた。主催者の人がやってきて「なーんだ、本業は巫女さんなんだ。今度は巫女コスプレ撮影会でもやろうかな」なんて言っていた。

家から外へ出ると、周囲はすでに暗くなりかけている。
誰かが「あれは何かしら」といって、道路に落ちている石を指さして怖がっていた。

私のいる角度からみると、明らかに石なんだけど、光の加減によっては、目をこらしても黒い謎物体にしか見えなくて、ちょっと不気味だったりする、そんな夕方の時間帯だ。
私はその石を持ち上げ、その子に石であることを説明してやる。その子は安心してくれた。

里桜が近づいてきて「あらあらやさしいのねぇ」と話しかけてくる。
「まあ、あたしもこれくらいの時間帯は、ちょっと怖いのよね。
 自転車に乗っていても、暗くてよく見えないし、何でもないはずのモノが人や動物に見えたりとかして、避けようとして事故りそうになったりするし」
「夕方は自転車のライトくらい付けなさいよ。
 でもそうね。これくらいの時間帯は、あらぬモノが見えたりとかして、自動車事故も多いとか言うし…」

私は、ちょっと怖がらせるようなことを言ってやる。

「ちょ、ちょっと、ウソ、怖いこと言わないでよね〜」
「ウソじゃないわよ。人間の視覚の問題ってのもあるけど、これくらいの時間帯は『逢魔ヶ時』なんて言っちゃって、魔に出会いやすい時間帯だとも言うし…」
「きょ、今日眠れなかったら、睦さんのせいだからね〜!」
「はいはい、明日香とでも一緒に寝させてもらいなさい」
「うえぇ〜〜〜ぃ」

と、その時、主催者の人が首をかしげているのが見えた。
人数を点呼しているようなのだが…。

私は主催者の人に「どうしたんですか?」と聞いてみる。すると、
「おかしいんだ。人数が一人多いような気がする」
と、嫌な回答が返って来た。

里桜も、
「あれ、たしかに、今日の人数よりも…ちょっと多い?」
とか不穏なことを言っている。誰か一人紛れ込んだ?

目をこらしてみても、光の加減の影響か、全員の顔がハッキリしない…。


と、街灯が点灯した。
全員の顔が、ハッキリと見える。

主催者が、改めて人数を数え直す。
やっぱり一人多いとつぶやく。

と、そこで里桜が気付いた。「アレ…」と、一人を指さして固まっている。
メイド服姿。しかし顔は真っ黒? まるで服以外……体だけ影みたいな…。

いた! そこで改めて、人間とは思えない気配を感じ取る。どうやら、私の”本業”の出番みたいだ。


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※このサイトは、着ぐるみ小説サイト「神緒のべるず」および、葦葉製作所頒布の小説「神緒のべるず 第1巻」、「神緒のべるず 第2巻(PDF版)」、Yuzu R.さんの再録本掲載の小説をWeb用に再編集したものとなります。一部は書き下ろしです。


関連サイト: 巫女ブラスター2 巫女ブラスター

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